子宮腺筋症とは?
子宮腺筋症の発生病理
正所性子宮内膜からの侵入
子宮筋層は子宮平滑筋の筋束の集まりからできていて、まずこの部分に子宮内膜の間質
細胞が侵入し、続いて腺細胞が侵入していく。
卵巣ホルモンによる発生
実験的にエストロゲンの持続投与により子宮腺筋症が発生することが知られている。Moriらは
成熟マウスにプロラクチンを投与すると、マウスの子宮に腺筋症を発生させることができることを
発表し、ブロモクリプチンの投与が子宮腺筋症を小さくさせることを確認し、マウスの腺筋症の発生
原因は、高プロラクチン血症にあるとした。
子宮腺筋症の病理学的所見
肉眼的所見
子宮は、全体的に増大し、大きさはガチョウの卵大から超手拳大の大きさのものが多い。病巣
は、筋層内にあって弾力性があり、その割面は境界不明瞭で桃赤褐色を示す。更に、その中に
ところどころに蜂の巣状または斑点状の茶褐色の出血斑が見られる。特殊な例として、腺筋症の
中に、チョコレート嚢胞がみられる時がある。
組織学的所見
組織学的には、内膜間質細胞だけの腺筋症の病巣はみられるが、内膜腺細胞だけの子宮腺筋
症の病巣はない。子宮筋層内では、間質細胞は筋束の間にびまん性に浸潤していて、腺筋症部分
と正常筋層との間に境界が認められる。
子宮腺筋症の診断
病歴
年齢
子宮腺筋症は、40代に多くみられる。
月経歴・妊娠歴
月経期間が1週間以上、月経量については、はっきりとしたデータはないが若い時より、
月経量が多い人の方が発生が高まる可能性がある。妊娠歴は、発生率を低める。
臨床症状
月経痛・月経困難・下腹部痛
性交痛・排便痛
過多月経・不正出血
不妊
内診所見(理学的所見)
子宮後転・子宮可動性の制限・後膣円蓋部有痛性硬結・
卵巣腫大(チョコレート嚢胞)など
子宮腫大
この子宮腫大は月経前に腺筋症が血液を吸い、月経後よりはより大きく腫大して触れる
ことがある。
画像診断法
子宮腺筋症に対する確定診断は、内視鏡検査・開腹所見によるが、臨床的には画像診断に
よることが多い。
超音波断層法
超音波による子宮腺筋症の診断には、子宮筋腫との鑑別が必要となる。子宮腺筋症の場合、
子宮全体に腫大する。子宮壁は全体的に肥厚し、びまん性で均一高輝度である。更に、腺性の
子宮腺筋症では、不均一で蜂窩状で小嚢胞のエコーとして見られる。特殊な例としては、肥厚した
間質層内に小嚢胞状のチョコレート嚢胞が見られる時がある。
CT像
子宮腺筋症の診断は、経膣超音波とMRIの普及により、あまり用いらなくなった。
MRI像
MRI画像は、一般的に、T1強調画像とT2強調画像に大別される。水では、T1強調画像で
低信号、T2強調画像で高信号を呈する。
子宮腺筋症のMRIは、T2強調画像で境界が明らかな子宮筋腫と異なり、境界不明瞭な低信
号の中に異所性子宮内膜症や出血を示す高信号が入り混じった像として観察される。
子宮卵管造影法(HSG;hysterosalpiangography)
子宮腺筋症で子宮内腔と子宮腺筋症が交通している場合に、HSG像で子宮腔から子宮筋層
へ向かう短い棒状または柵状の侵入像や脈管像が見られる。更に、子宮の異常陰影として子宮
内腔の拡大陰影や子宮筋腫などでは説明できない子宮内腔の変形像が見られるのが特徴である。
血清学的検査
CA125
100u/ml台が殆どで、200u/ml以上は少ない。特に高値を示す場合は、卵巣がんとの
鑑別が重要である。
CA19−9
CA125と併用することにより、悪性腫瘍との鑑別診断としている。
腹腔鏡検査
子宮腺筋症の治療
薬物療法
対症療法 疼痛に対して、プロスタグランジン合成阻害剤などを処方する。
偽妊娠療法
月経量の減少作用と月経困難症の軽減。
ダナゾール療法
ダナゾールは、ヒトゴナドトロピン(LH・FSH)の周期性ピーク(mid−cycle surge)を
制御して排卵を抑える。しかし、エストロゲン値は、30〜50pg/mlと低値を示すが、
GnRHアゴニストに比べ、エストロゲンの抑制は軽い。薬理作用として、子宮内膜症に
対する直接作用がある。更に、子宮内膜細胞のDNA合成を阻害し、子宮内膜の増殖
を抑制する。
副作用として最も多いのは、体重増加で、体重増加が3〜5kg増加が85%とにものぼ
るとの報告もある。生化学的には、10%の人に、GOT・GPT値の上昇が見られる。不正
出血は、10%〜20%に見られる。また、稀に血栓症の報告がある。
GnRHアゴニスト療法
GnRHアゴニストは、ペプチドホルモンであり、経口投与では吸収されないので、点鼻薬
や皮下注射で使用される。
副作用としては、低エストロゲン状態による更年期様用症状で、のぼせ感やほてり感、
頭痛、肩こりなどである。特に注意すべき副作用は、骨塩量の低下である。GnRH投与で
は、血中エストロゲン値が、30pg/mlと低下してしまう。薬剤療法の再発率は3ヶ月から
2年で約30%〜50%と高く、重症例の方が高い再発率を示す。
手術療法
保存手術 現在の主流は、腹腔鏡下による手術である。
根治手術 子宮全摘術。開腹手術が一般的である。
非観血的治療法 チョコレート嚢胞の内容吸引術・エタノール固定法がある。
子宮腺筋症の手術療法
保存手術
東邦大学医学部産婦人科では、不妊症患者や子宮の温存を希望する患者に子宮腺筋症
の縮小術および核出術を行っている。
子宮腺筋症に対する核出術は、MRIを撮影し、大きさ・位置・子宮内膜との関係を調べる。
子宮腺筋症がびまん性に子宮全体におよび手挙大以上に増大した子宮に対する縮小術は
困難である。
根治手術
子宮全摘術。一般的には開腹。近年、腹腔鏡を利用して膣式に子宮全摘術
(腹腔鏡下膣式子宮全摘術)が行われるようになってきた。
参考図書
(真興交易(株)医書出版部 大衆医学撰書 東邦大学医学部産婦人科教授 小倉久男 著
『子宮内膜症と子宮筋腫の病態生理と診断・治療』 ISBNコード ISBN4-88003-628-5
C0347 定価 本体1800円+税 より抜粋しました。)