過多月経に対するマイクロ波子宮内膜焼灼術
はじめに
順調な月経は更年期前の女性にとって健康のバロメーターである。しかし、過多月経により
貧血を繰り返し、日常生活にも支障をきたしている人にとってはただ苦痛をともなうものばかり
であることも多い。過多月経の治療としてまずGnRhアナログによる偽閉経療法が挙げられる
が、効果を認めない場合や再発例では手術療法を考慮する。最近では、子宮全摘術よりも手術
侵襲の少ない子宮内膜焼灼術が注目されている。
子宮内膜焼灼の方法としてレーザー焼灼、レゼクトスコープの切断ループやローラー電極に
よる焼灼、子宮腔内バルーン温水還流などがあげられる。レーザー焼灼では子宮内膜の焼灼
深度が測れず子宮を貫通する恐れもあり、子宮内の視野を確保したうえでの手技であるため
技術的に修練を要する。さらにレゼクトスコープでは、子宮内に非電解質溶液の還流液を流す
ことから低Na血症になる可能性がある。子宮内腔バルーン温水還流では子宮内腔の形状異
常による治療制限があり、術後の月経減少率は低い。
1995年にニコラスらがマイクロ波子宮内膜焼灼術(MEA)を報告し、安全性・簡便性・効果
面で優れていることから海外ではレゼクトスコープによる子宮内膜焼灼術に変わって広く行わ
れだしている。当院でも2000年6月より、英国Microsulis社のMEA systemを導入したので
、その使用経験を報告する。
適応
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどの良性器質的疾患による過多月経や、血液
凝固異常、抗凝固剤の投与による過多月経が適応として挙げられる。この中でも以下の場合は
除く。@挙児希望ありA3cm以上の粘膜下筋腫があり子宮腔内を占拠しているB子宮腔の強度
変形C子宮悪性腫瘍
MEA system
MEAで使用するマイクロ波は9.2GHzで、子宮内での深達度は約3mmであるが、熱伝導
のため、約6mmまで変性する。子宮内に挿入するアプリケーターは直径8.5mmの直線円筒形
で、その先端より半円球状にマイクロ波が放出される。アプリケーターの先端には温度センサー
が付いており、30℃以上にならないとマイクロ波が放出されず、体外での誤作動を防いでいる。
焼灼中も90℃以上になった場合に焼灼を中断させる安全装置が付いている。焼灼を始めてから
時間経過とアプリケーター先端の温度が本体の画面に表示される。
方法
すべての患者に子宮頸部の細胞診とて子宮体部の細胞診を術前に施行し異常のないことを
確認している。術前4週以上前よりダナゾール400mg/dayあるいはGnRHaを投与し子宮内膜
を薄い状態にする。当院では静脈麻酔下にMEAを行っている。子宮頸管はヘガール子宮頸管
拡張器によて9mmまで拡張し、アブリケーターの先端が子宮底まで挿入してから焼灼を始める。
本体の画面に表示されるアプリケーター先端の温度が、至適温度の70度〜80度になっている
ことを確認しながら、アプリケーターをゆっくり左右に振り、順次内子宮口まで焼灼する。子宮頸管
は術後狭窄しないよう焼灼しない。
一回の焼灼で十分といわれているが、当院では念のためもう一度子宮底から焼灼を行い、
終了後、子宮鏡にて子宮内膜が均一に焼灼されたことが確認している。焼灼時間は約4分で
終了する。術中術後の出血はほんの少量であり、術後の疼痛は軽度で鎮痛剤はほとんど
必要しない。最初の1症例は、念のため1泊入院としたが、それ以外はすべて日帰り手術扱い
とした。焼灼された子宮内膜は約一ヶ月の間の帯下として徐々に排出される。その際に感染
を起こした例が1例あったが抗生剤投与で軽快した。
当院での成績
術後半年間の経過の取れた14症例を検討した。
年齢は38〜49歳、平均年齢43.4歳、子宮筋腫5例、子宮腺筋症9例、平均手術時間
4分21秒、術後の月経量は、無月経21%、非常に軽度57%、中等度で以前よりも少なく
満足していると答えたのが21%とすべての人に月経量の減少を認めた。
月経痛が継続しており、月経痛の軽減のみを目的としてMEAを行うことは不適当と
思われる。
まとめ
MEAは、9.2GHzマイクロ波を使用するため子宮内で3mmしか到達せず、センサーにて
温度監視を行うこと、治療温度も70〜80度と低いことから周囲の臓器損傷の心配が少ない。
手術侵襲も少なく手術時間は約4分と短いため、静脈麻酔、子宮頸管ブロックや腰椎麻酔
などの局所麻酔ででき、日帰り手術が可能であり、合併症により子宮全摘手術をあきらめか
ねない症例にも適応を広げることができる。主義も簡単なため、短期間で治療技術を習得
できる。当院での月経量減少率は現在のところ100%であり、海外の報告でも80%以上に
月経量減少を認めている。
MEAは、安全性、簡便性と治療効果からその有用性を高く評価できる。
( 参考図書 永井書店 『産婦人科治療』 平成14年8月1日発行
定価 本体2400円+税 P209〜211
「私たちはこうしている
過多月経に対するマイクロ波子宮内膜焼灼術」
医療法人医仁会武田総合病院 産婦人科
藤谷 真弓氏 、岩下 寿子氏 、 三野 直純氏 、山本嘉昭氏 )