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  子宮腺筋症の核出


 子宮腺筋症(以下腺筋症と略)は、経産婦や流産既往のある性成熟期後半の婦人に
多く発生するため治療法としては、大部分子宮の全摘が選択され、保存的治療の試みは
これまで臨床の表舞台に出ては来なかった。しかしながら、女性の晩婚化と腺筋症そのも
のの増加によって、妊孕性の温存を希望する女性の腺筋症治療は無視できないものになっ
てきた。この様な社会的背景と薬物療法が小さな腺筋症に対するダナゾール療法以外ほと
んど無効であるため、腺筋症を核出する試みが多くの施設から報告されている。
 我々のその術式の開発に取り組んでいるので、その手技を紹介したい。

 ある病変を核出するという術式は、核出すべき病巣が正常組織と明瞭に識別され、しかも
機械的に分離可能な場合に成立する。ところが、腺筋症の場合には、この両方の条件が
当てはまらない。
 即ち、@腺筋症は、肉眼的に正常子宮筋との区別がつけ難く、手術時にその局在が、はっ
きり識別できない。A腺筋症組織は、正常子宮筋の中に複雑に入り込んでおり、境界が不明
瞭で、正常子宮筋と機械的に分離できない。この様に、腺筋症の核出術は、子宮筋腫の核出
術のように、目で見て、メスとクーパーを用いて核出するという従来の概念をそのまま当てはめ
ることができず、術式そのものに病巣の識別から切除機器まで新たな概念の導入が必要である。

 今回は、この2点に関する我々の工夫を紹介する。

 1.腺筋症の識別

   核出に際して、まず大切なのは、腺筋症部分の正確な把握である。
  腺筋症の診断は、患者の主訴と理学的所見、それに経膣超音波像、CA125値などから
  なされ、その主たる局在は、MRI像で知ることができる。しかし、手術操作にあたって、
  正常筋層と腺筋症部分の境界を肉眼的に正確に識別するのは難しい。我々は、腺筋症
  の硬さに注目した。腺筋症組織部分は、正常子宮筋に比べて硬いので、触診によって
  腺筋症の局在を知ることが可能である。特に、術中に核出範囲を決める場合には、触診
  で硬い部分があれば腺筋症が残存し、なければ正常筋層であるとほぼ正確に判断する
  ことができる。この様に、指で探ることによって、腺筋症部分の識別とその局在を正確に
  知るという問題は一気に解決した。

 2.腺筋症を核出するための器具

    次は、その複雑な分布に臨機応変に対応できる切除器具の開発である。
   当初、腺筋症を一塊にして筋腫のように核出していたが、基本的には、この様のような
   操作では、正確に腺筋症と正常筋層の境界部に分け入ることはできない。そこで我々は
   オネストメディカル社製高周波切除器(下平式高周波手術器 MGI-202)に接続して
   使用する、新たに試作されたリング導子(特殊導子先タイプT)を用いた。リング導子の利点
   は、切除と凝固が同時に行えること、また、その大きさを変えることによって、大きくも、
   小さくもどのような形状にも対応して切除操作が可能な点である。この機器を利用する
   ことによって、腺筋症と正常筋層の境界部を指で探りながら腺筋症部分を繊細に核出
   できるようになった。

 3.全周性の場合

     腺筋症の分布が広い場合や全周性の場合には、すべての病巣を切除するのは
    不可能なので、その場合には、前後壁の奬膜を縦切開し、腺筋症の病巣が少ない
    奬膜付近の筋層を1cm位の厚みで残した上で、創部から筋層内の腺筋症部分を
    核出する。子宮動脈が走行する子宮の左右には手をつけずに残し、奬膜側に残った
    子宮筋で子宮を形成するようにしている。
     腺筋症の核出術は、妊孕性温存を希望する若年女性を対象とした発展途上にある
    手術である。今後も、術後の症状の改善度、妊娠率、或いは再発率等に関する長期
    的予後を見ながら術式の改善がなされていくべきであろう。

 (日本不妊学会雑誌 第48巻第3・4号 
    2003年10月1日発行
      ビデオセッション「私の工夫:手術」 
      3)子宮腺筋症の核出
        国立霞ヶ浦病院産婦人科 西田正人氏 
                   より抜粋掲載しました。 )


   3相性および1相性低用量ピルの月経痛緩和効果
 における比較検討成績

    【目的機能性月経困難症および子宮内膜症例の疼痛緩和目的で低用量経口避妊薬
    (OC)が有用であることは報告されているが、OCの種類、投与形式による緩和効果の
    差については検討されていない。今回は、上記症例に対する3相性および1相性OCの
    周期性投与下の疼痛緩和効果を比較検討した。

    【方法】24〜39歳の15例(子宮内膜症6例、臨床子宮内膜症4例、機能性月経困難症
    5例)に対し、1相性、3相性OCを6ヵ月以上周期性に投与し、OC投与前後の月経痛・
    性交痛・排便痛をVAS法で評価した。さらに同一症例に対し1相性、3相性OCを投与し、
    同項目をVAS法で評価した。1相性、3相性OCのみの投与例は、各5例、2例、両OC
    投与例は8例であった。

    【成績】1相性OC投与例(13例)のVASの平均は、投与前9.4、投与後3.1であった。
    3相性OC投与例(10例)ではそれぞれ9.1、5.5であり、両剤ともに投与前の疼痛は
    著明に減少していた。さらに1相性OCから3相性、あるいは3相性OCから1相性へと
    同一症例で両剤を投与した8例についての投与後VAS評価を検討すると、前者では
    3.5から4.2、後者では、5.7から3.6であり、1相性OC投与後VASは、3相性に比較
    し明らかに低値を示した。

    【結論】機能性月経困難症および子宮内膜症例の疼痛は、OC投与により著明に改善
    したことから、OCは有効な治療薬剤として選択される可能性があることが示された。
    さらに1相性OCの周期性投与は、3相性と比較し著な疼痛緩和効果を示し、臨床的
    有効性が確認された。

 (日本不妊学会雑誌 第48巻第3・4号 
    2003年10月1日発行
   
札幌医科大学 医学部 産婦人科学講座
  
林 巧、藤井美穂、北島義盛、遠藤俊明、
       工藤隆一
氏 より抜粋掲載しました。 )


   子宮腺筋症異所性内膜でのユビキチン化蛋白は、
  GnRHアゴニスト治療により減少する


  【目的】ユビキチン・プロテアソーム系は、ATP依存性タンパク質分解系で、近年、細胞周期、
  シグナル伝達など多くの生物学的事象の制御に関与していることが報告されている。しかし、
  生殖における役割は依然として解明されていない。今回、私達は、ヒト正常月経周期の子宮
  内膜および子宮腺筋症の正所性と異所性内膜におけるユビキチン化蛋白の局在を確認し、
  GnRHアゴニスト治療のそれらへの影響について検討したので報告する。

  【方法】対象は、子宮腺筋症23症例で、6例は、術前にGnRHアゴニストを6ヵ月間使用し
  ていた。また、正常子宮内膜を有する生殖年齢の子宮頚癌0期の症例をControlとした。
  手術的に採取した子宮を患者の同意のもと本研究に使用した。
   免疫組織化学染料には、一次抗体として、rabbit polyclonal抗ユビキチン抗体
  (Santa Cruz社)を用いた。ユビキチン化蛋白の染色性は、スコアにより定量化し評価した。
  
  【結果】正常子宮内膜の腺上皮細胞では、ユビキチン化蛋白が検出されたが、月経周期
  を通じて、その染色強度に周期性を認めなかった。子宮腺筋症の正所性子宮内膜でも
  ユビキチン化蛋白が検出されたが、異所性子宮内膜では、さらに強いユビキチン化蛋白
  の染色性が認められた。しかし、GnRHアゴニスト治療により、異所性子宮内膜でのユビキ
  チン化蛋白の出現は有意に抑制されていた。

  【結論】ユビキチン化蛋白、正常子宮内膜の腺上皮細胞にも存在し、生理的機能を持つ
  可能性がある。また、子宮腺筋症の異所性子宮内膜では、蛋白のユビキチン化が促進
  していると考えられ、病変の形成への関与が推測される。

 (日本不妊学会雑誌 第48巻第3・4号 
    2003年10月1日発行
   
岡山大学 医学部 産科婦人科
  
鎌田泰彦、中塚幹也、野口聡一、Chekir Chebib
       平松裕司
氏 より抜粋掲載しました。 )


 
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