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 子宮腺筋症、卵巣チョコレートのう胞に伴う
  月経痛に対するリプロキュアの効果


    
                                   ロマリンダクリニック
                                    
                            富永国比古氏 水上治氏 YAo Huei Lin氏

 はじめに

 近年、先進諸国を中心に子宮内膜症、子宮腺筋症に罹患かる女性が増加している。症状としては、
激しい月経痛、性交痛、排便痛などであるが、これらの痛みは、女性のquality of lifeを著しく損なう
ものである。これらの疾患の発症のメカニズムは、まだ完全には解明されてはいないが、疫学的立場
から、何らかの環境因子(内分泌かく乱化学物資など)の関与が推定される。現在の治療法は、薬物
療法か手術療法であるが、そのどちらかによっても、治療終了後にしばしば再発し、根治困難なケース
が少なくない。現在、標準治療とされているダナゾールやGnRHアナログ療法も、その副作用の少ない
漢方薬や薬草などの応用が期待されている。

 研究対象および方法

 研究目的:

 リプロキュア(薬草系健康食品)が、子宮腺筋症または卵巣チョコレートのう胞に伴う月経
痛に対して有効かどうか、その安全性を含めて検討した。

 研究対象および方法:

 1998年1月から2000年1月の間に、Lomal Linda Clinic婦人科外来で超音波断層法ahd/or MRI
によって、卵巣チョコレートのう胞ahd/or 子宮腺筋症と診断された20名(22歳〜45歳)を研究対象
とした。内訳は、子宮腺筋症5例、卵巣チョコレートのう胞12例、両者の合併したもの3例である。
すべての対象者から、あらかじめinform consentを得たうえで、リュプロキュアを投与し、6ヶ月にわ
たって前向き観察した。投与量は、服用によって下痢、軟便などを訴える者もあり、統一は出来な
かったが、一日、8〜12錠服用してもらった。

 治療開始前、治療後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のそれぞれのポイントで、月経痛(月経前1〜2日、
月経1〜2日、月経3〜4日)の程度をVAS(Visual Analogue Scale)で評価した。VAS(Visual
 Analogue Scale)は、1983年、Priceらによって、慢性疼痛に対するrate scaleとしての妥当性
が確認されている。また、生化学的マーカーとして、CA125、LH、FSH、E2、プロラクチンを測定
した。LH、FSH、E2、プロラクチンは、日本ビオメリュー社のVIDASによった(プロラクチン値の日本
ゴールドスタンダードRIA法への変換は、VIDASの測定値に0.5の係数を掛ける)。

 CA125の測定は、月経期間を避けて、初期増殖期あるいは後期増殖期に行った。LH、FSH、
E2、プロラクチンは、月経3〜5日目に採血し測定した。

 研究結果:

 リプロキュア投与前に比べて、月経前1〜2日、月経1〜2日、月経3〜4ひのVAS値は、それぞれ
のポイントで、いずれも統計的に有意に減少し、6ヶ月後のVAS値の減少率は、それぞれ、-50.5%、
-52.6%、−62.7%であった。(表-1)生化学的マーカーの結果は、表-2及び表-3に示した通りである。
CA125は、統計的に有意な減少が認められた。LH、FSH、E2は、投与前に比べて、投与後6ヶ月目
では減少傾向が認められたが、統計学的には有意ではなかった。プロラクチンは、投与前に比べて、
投与後6ヶ月目で、統計学的に有意な減少が認められた。リプロキュアの副作用としては軟便〜
軽度の下痢のみであり、肝機能、腎機能、一般血液検査に異常は見られなかった。また、基礎体温
上、排卵の抑制は見られず、月経周期の変動は、25〜35日と、正常月経周期の範囲にとどまって
いた。

 考察

 近年、先進国を中心に急増している子宮内膜症や子宮腺筋症は、症状として、激しい月経痛、
性交痛、排便痛などを伴うため、女性のquality of lifeを著しく損なう疾患である。再発を繰り返し、
長期にわたる治療を余儀無くされることも多い。さらに、繰り返す疼痛に対する「予期不安」のため
に、うつ状態になったり、周囲の無理解に苦しんでいる女性も少なくない。原因については、何らか
の環境因子が関与している可能性が強いが、未だ不明の点が多い。現在、標準治療とされている
ダナゾールやGnRHアナログ療法は、その副作用が大きなネックになっている。また、ラパロスコ
ープなどで確定診断が下されていない患者や、未婚の若年女性に対してfirst choiceとして、この
ような治療を試みることは、多くの臨床医は抵抗がある。そのような場合、副作用の少ない漢方薬
やリプロキュアのような薬草を先ず試みてみることは、妥当なことであろうと思う。

 今回、われわれは独自に開発した、薬草系健康食品リプロキュアの臨床試験を試みたが、子宮
腺筋症または卵巣チョコレートのう胞に伴う月経痛に対して、極めて有効であることがわかった。
さらに、子宮内膜症の血清マーカーであるCA125の減少、プロラクチンの減少なども同時に観察
されたが、このことは、今後、リプロキュアの作用のメカニズムを解明するための参考となると思わ
れる。

 CA125の減少は、子宮内膜症や子宮腺筋症に伴う何らかの炎症性のプロセスに抑制的に
作用した可能性が考えられる。また、リュプロキュア投与によって、プロラクチンが有意に減少
した事実は、子宮腺筋症が「高濃度のプロラクチン暴露と関係がある」とする守らの研究との
関連で興味深い結果であった。今回の研究では、対象者が20名と少数であり、無作為割り付け
試験もできなかったのでselection biasをコントロールできなかった。そのため、研究結果が
ゆがめられた可能性も否定できない。

 今後の課題として、無作為割り付け試験によるclinical traialを計画し実行したいと考えて
いる。いずれにしても、今回報告したリプロキュアは、子宮内膜症や子宮腺筋症の発症を
未然に防ぐ、いわゆる一次予防対策として用いる事も出来るし、ダナゾールやGnRHアナログ
療法後の再発予防にも有用であろう。

 表-1 リプロキュア投与による月経痛の変化

投与前 投与1ヶ月 投与3ヶ月 投与6ヶ月 減少率
月経前1〜2日 36.6±5.85 27.3±5.58
(P=0.038)
20.6±4.96
(P=0.010)
18.1±4.82
(P=0.004)
−50.5
月経1〜2日 78.0±3.97 48.2±5.62
(P<0.001)
37.6±5.72
(P<0.001)
37.0±6.77
(P<0.001)
−52.6
月経3〜4日 44.8±5.59 22.9±5.25
(P<0.001)
17.9±4.43
(P<0.001)
16.7±4.29
(P=0.002)
−62.7

                                          (n=20)
        数値は、visual analog scaleによる得点数(M±S.E.)

 表-2 リプロキュア投与後におけるLH  FSH E2 PRLの推移  

服用前 服用6ヶ月 P-value
LH 6.29±1.48 4.75±0.68 P=0.186
FSH 7.96±0.10 7.25±0.67 P=0.233
E2 82.81±38.80 38.02±3.45 P=0.252
PRL 28.60±3.00 15.81±1.44 P<0.001

                         (n=20)

 表3 リプロキュア投与による血清CA125値の推移

服用前 服用1ヶ月 服用後3ヶ月 服用6ヶ月 単位
109.84 60.45 54.28 49.23 U/ml
リプロキュア投与前に
比べて(M±S.E..)
p=0.013 P=0.001 P=0.001


(エンドメトリオーシス研究会会誌 VOl.22 
   2001 169ページから171ページを
     抜粋・掲載しました。)


2 マウスの自然発生子宮腺筋症に与える
  リプロキュアの効果

 ロマンダクリニック             富永国比古氏 Yao Huei Lin氏

 東京大学大学院理学系研究科       守隆夫氏 中橋径子氏

 東京医科歯科大学難治疾患研究所
      機能調節疾患研究部門       坂本忍氏 左雨秀治氏

 はじめに

 リプロキュアは、台湾山地に自生する五種類の薬草(B frondosa L,Citrus
 unshiumarcov, Lagenaria Siceraria Standl,Ixeris stolonifera A. Gray,
 SaginaJaponica(Sw.)Ohwi,Ananascomosus(L.) Merr.)をブレンド、これに、
発酵、焙せんなど数種類にわたる工程を加えて、低分子加工したものである。
(製法特許申請中、健康食品として認可済)。

 この薬草は、従来の中国伝統医学では、女性が訴える様々な症状、とくに月経不順、
月経困難、更年期障害、冷え性、不妊症などに効果があるとされてきた。最近になって、
富永らは、リプロキュアの臨床的研究をすすめ、機能性月経困難症はもとより、子宮腺筋症
あるいは子宮内膜症の症状改善に有効であることを報告してきた。今回、われわれは、リプ
ロキュアの効果を確認するために、すでに守らが作成したマウスの自然発生子宮腺筋症
モデルおよび下垂体移植による誘発子宮腺筋症モデルを用いて、実験的研究を試みたの
で報告したい。

 従来、マウス・ラットなどを用いて実験的に子宮腺筋症を発症させるには、女性ホルモン
を6ヶ月以上にわたって連続投与する必要があり、このような長期的処理では発症の初期
段階を捉えることができないため、動物を用いた薬剤の効果の検討は、ほとんど不可能で
あった。守らの種類の純系マウスを用いて、同系他個体の下垂体を子宮内に異所性移植
することで、子宮腺筋症を早期かつ高頻度の誘発する事に成功し、下垂体移植により誘発
される高プロラクチン血症が、発症の主たる原因と考えられることを報告した。

 マウスの子宮では、筋層の厚さが、内膜組織の厚さに比べて薄いため、内膜組織が筋層
に侵入するだけでなく、筋層を突き抜けて奬膜下に達し、外見から簡単に判別できる奬膜下
結節(subserosal nodules)を容易に形成する。さらに、下垂体の異所性移植により高プロ
ラクチン血症を示すマウスを長時間飼育すると、異常増殖した内膜組織は輸卵管、卵巣にま
で侵入し、いわゆる子宮内膜症のような所見を示す。このように、マウスに発症した子宮腺筋
症は、ヒトの場合と異なった特徴的な病理組織像を呈するのである。さらに電子顕微鏡を用い
た観察から、腺筋症発症の原因は、高濃度のプロラクチンが長時間作用することで、筋層の
平滑筋細胞が破壊されるためであると結論した。

 子宮の内膜組織と筋層の間には、基底膜のような構造はなく、密に並んだ筋細胞の壁が
単に物理的に内膜組織の外向きの増殖・伸展を抑えている。そこで、筋細胞が崩壊すると、
増殖の活発な内膜組織の、筋層への侵入が容易になるものと考えられる。このような下垂体
の異所性移植による子宮腺筋症誘発に関する一連の実験過程で、SHN系マウスを用いた時
に、最も早期かつ高頻度に子宮腺筋症が自然発生することも明らかになった。これまでにいく
つかの系統のマウスで報告されていた腺筋症の自然発生は、12ヶ月齢以上の加齢を必要と
したが、SHN系マウスを用いて自然発生した、あるいは、実験的に誘発した子宮腺筋症に対
するリプロキュアの効果を検討した。

 実験の目的および方法

 マウスを用いて子宮腺筋症の自然発症や実験的誘発腺筋症の発症がリプロキュアによ
って阻止できるかどうかを検討した。実験動物としては、SHN系マウスを使用した。基本的
実験は、正常SHN系雌マウスを正常雄マウスとかけ合わせ妊娠・出産させ、そのまま哺乳
させた。生後22日に離乳して、雌マウスは、5〜8匹単位で、まとめて飼育した。その後の
処理に関わらず、全て110日齢を供試した。次のA,B二群の実験を行った。

 各群を列挙すると
  
  A. リプロキュアの腺筋症自然発症に対する効果
 
 @生後22日に離乳させてから、2.5%のリプロキュロア含有飼料(CA-1)で飼育、110日齢
  に供試。
 A生後22日に離乳させてから、5%のリプロキュロア含有飼料(CA-1)で飼育、110日齢に
  供試。
 B生後22日に離乳させてから、7.5%のリプロキュロア含有飼料(CA-1)で飼育、110日齢
  に供試。
 C正常対照群は、離乳させてから以後何も処理は行わず正常マウス飼料(CA-1:日本ク
  レア製)で飼育、110日齢に供試。

  B. リプロキュアの誘発腺筋症に対する効果

 @生後22日に離乳させてから、7.5%のリプロキュロア含有飼料にて45日まで飼育、45日齢に
  同系同齢雄マウスの脳下垂体を右子宮腔内に移植し、その後も7.5%リプロキュア含有飼料
  (CA-1)にて飼育、110日齢供試。
 A生後22日に離乳させてから、7.5%のリプロキュロア含有飼料にて45日まで飼育、45日齢に
  同系同齢雄マウスの脳下垂体を右子宮腔内に移植し、その後は正常飼料にて飼育、110日
  齢供試。

  110日齢の午前中(10時〜12時の間)に、体重を測定後、頚椎脱臼により屠殺した。

  結果

   表-1に結果をまとめた。

  表-1 マウス子宮腺筋症発症

実験群 使用匹数 体重(g) 腺筋症発症個数体数 黄体所有個体
2.5%リプロキュア 14 25.4±0.4a 7(50%) 13(93%)
5.0%リプロキュア 13 25.7±0.5b 1(8%)e 10(77%)
7.5%リプロキュア 12 23.8±0.6c 0(0%)f 0(0%)h
正常対照群 20 28.5±0.5a,b,c 8(40%)e,f 20(100%)h
7.5%リプロキュア
+脳下垂体移植
12 26.2±0.7d 1(8%)g 3(25%)i
正常飼料
+脳下垂体移植
14 29.7±0.6d 14(100%)g 14(100%)i
a.b.g.h.iP<0.01,cP<0.001,d,eP<0.05,fP<0.02,
体重はt-test,子宮腺筋症の発症率と黄体所有個体率は、X2testによる

  1)リプロキュアの腺筋症自然発症に対する効果(実験A)

  腺筋症の発症個体数をみてみると、正常飼料対照群が、8/20(40%)の発症率である
 のに対して、5.0%リプロキュア投与群の発症率は、1/13(8%)、7.5%リプロキュア投与群の
 発症率は、0/12(0%)と、統計的に有意に抑制された。

  2)リプロキュアの誘発腺筋症に対する効果(実験B)


  脳下垂体移植を施したマウスにおける、腺筋症の発症個体数をみてみると、正常飼料
 対照群が、14/14(100%)の発症率であるのに対して、7.5%リプロキュア投与群の発症率は、
 1/12(8%)と、統計学的に有意に抑制された。

  3)実験A,実験Bの二つの実験において、7.5%リプロキュア投与によって、統計学的に
  有意な黄体所有個体の減少が見られた。

  4)正常飼料対照群に比べて、リプロキュア投与群のいずれもが統計学的に有意な
  体重減少を示していた。

  考察

 子宮腺筋症の症状の特徴は、内膜組織が筋層に浸潤することである。臨床的には、
月経痛や過多月経などの原因となり、また不妊の原因にもなっている。薬物療法として
は、これまでダナゾールやGn-RHアゴニスト投与などが主として行われてきたが、これらの
薬剤による副作用に悩む女性も少なくなかった。そのため、副作用の少ない漢方療法も各
種試みられてきた。今回、われわれは、すでに臨床的に症状の改善に有効であることが
報告されているリプロキュアが、子宮腺筋症の発症を阻止し得るかどうか、SHN系マウス
を使用したモデル実験によって研究した。

 その結果、5%、7.5%の割合で、リプロキュアを混合した飼料をマウスに与えることで、子宮
腺筋症の自然発症が抑制できることが明らかになった。また、子宮に下垂体を移植し、子宮
腺筋症を発症しやすくしたマウスにおいて、7.5%リプロキュアをマウスに与えたところ、子宮
腺筋症の発症を阻止することができた。これらの事実は、すでに発表してきたリプロキュア
の効果に関する臨床的研究の結果とも一致する。

 尚、7.5%リプロキュア投与によって、統計学的に有意な黄体所有個体の減少が見られた
が、これは、リプロキュアが、estrous cycleに対して抑制的に作用していることを示唆して
いる。また、正常飼料対照群に比べて、リプロキュア投与群のいずれもが、統計学的に有意
な体重減少を示していた。これは、リプロキュアが、ある種の臭気を伴うため、マウスの食欲
を抑制したためと考えられる。しかし、体重減少が、実験結果に影響を与えた可能性も否定
できないので、今後体重を調整した実験モデルを作成し、検討して行きたいと考えている。

 (エンドメトリオーシス研究会会誌 
  Vol.22 2001 185ページから188
  ページを抜粋、掲載しました。)


 
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