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   子宮腺筋症のホルモン療法

 子宮腺筋症は生殖年齢に見られる疼痛を主訴とする良性疾患であるが、治療が困難なことが
多い疾患である。
治療法は外科的治療法と薬物療法に分けられるが、実際に行われる治療として
は薬物療法が主であり、ホルモン療法が大部分を占める。
また、この疾患の特殊性として生殖期間
中は治癒が困難であるが妊娠・分娩、閉経により症状の軽快が可能であることから、その患者のライフス
タイルに合わせた治療法の選択が必要となる。

ホルモン療法の位置づけ

 子宮腺筋症の主訴として、月経困難症、骨盤内(下腹部)痛、不妊・不育症が挙げられ、治療とし
ては疼痛の緩和を目的として非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用し、疼痛のコントロールが困難な場合
にはホルモン療法を行う。ホルモン療法では、薬剤投与中は子宮内膜の退縮効果により症状の軽快
が期待されるが、子宮腺筋症病変を治癒させることは不可能であり再発してくるものが多い。
この
ため、ホルモン療法を繰り返し行うことを余儀なくさせられることがある。
 また、薬物療法が効果がない場合、腺筋症病変部の減少を目的として薬物注入(ミノマイシ
ン等)やレーザー照射、切除等の外科的療法が試みられているが、一定の評価を得ていないの
が現状である。

 現在行われているホルモン療法には以下の表のようなものがある。

薬剤名 使用法 副作用等
黄体ホルモン ヒスロン
プロベラ
2.5〜15mg/day 性器出血・嘔吐・脂質代謝異常
偽妊娠療法
(エストロゲン・プロゲス
テロン剤)
ドオルトン
プラノバール
低用量ピル
性器出血・嘔吐・浮腫・乳房痛
脂質代謝異常
偽閉経療法(ダナゾール) ボンゾール
ソフナリン
200〜400mg/day、24週間連続投与 男化症状・体重増加・肝機能
障害・血栓症
偽閉経療法(GnRHアナログ) スプレキュア
900μg/day(3回/日)、24週間連続経鼻投与
1.88/3.75mg・6回(6ヶ月)皮下/筋肉注
低エストロゲン症状(更年期障
害様症状)、骨量減少・脂質代
謝異常・血圧上昇・凝固系異常
ナサニール 200μg/day(2回/日)、24週間連続経鼻投与
リュープリン 1.88/3.75mg・6回(6ヶ月)皮下/筋肉注
ゾラデックス 1.8mg、6回(6ヶ月)皮下/筋肉注


1.黄体ホルモン剤

 黄体ホルモン剤の投与により子宮内膜は直接作用と卵巣機能抑制効果により退縮する。これを利用
して1960年頃より治療に用いられてきた。しかし、副作用の問題がある。

2.偽妊娠療法(エストロゲン・プロゲスタロン剤)

 1950年代に行われた高用量のビルによる偽妊娠療法は、妊娠と同様の高エストロゲン・プロゲステロン
 状態による子宮内膜の退縮効果が認められたが、長期間投与による副作用の問題があった。しかし、本邦
1999年に認可となった低用量ピルでは副作用が軽減され、子宮内膜の退縮効果も認められるた
め今後の応用が期待される。


3.偽閉経療法(ダナゾール)

  ボンゾールはステロイド構造を持つ男性ホルモンの誘導体であり、子宮内膜への直接作用と卵巣機能
抑制による低エストロゲン状態から子宮内膜を萎縮させる。また、この他に免疫系への影響もあるとされて
いるが詳細は分からないことが多い。後述のGnRH agonistが使用可能となるまでは広く用いられていた
薬剤であったが、副作用の問題が大きく GnRH agonist の登場とともに使用頻度は激減した。しかし、
低用量による長期投与や局所投与、免疫系への影響を利用した不育症治療の可能性が検討されて
いる
。 

4.偽閉経療法(GnRH agonist)

  上記表には、現在日本で保険療法が可能なGnRH agonistは、GnRHの数百倍の生物活性を有し
ている。
 GnRH agonistを投与すると初期には flare up現象と呼ばれるゴナドトロピンの分泌刺激が見ら
れるが、その後2〜4週間後前後で下垂体GnRH受容体の脱感作現象(down regulation)が起
こりゴナドトロピンの分泌が抑制され、ステロイドホルモン産出が抑制される。このため、月経は使用開
始2ヵ月でほぼ停止する。副作用として低エストロゲン症状の顔面紅潮(hot flash)、発汗、四肢冷感、
肩こり、鬱傾向等や骨塩量の減少がある。
このため現在ではGnRH agonistの使用は6ヵ月が限度とされている。

5.偽閉経療法(GnRH antagonist)

  GnRH antagonistは agonistに認められるような flare up 現象がなく、短期間でゴナドトロ
ピンの分泌を抑制する。現在、本邦において臨床治験中であり、その効果が期待されている。

<add-back療法>

 偽閉経療法では、低エストロゲン状態による更年期障害様症状や骨塩量の減少などから長期連続
投与は不可能であり、現在では6ヵ月を限度とした治療が行われている。しかし、症状等から6ヵ月を
越えた長期投与や短期間の休薬での次の投与開始が必要となる症例もある。そこでadd-back療法に
より低エストロゲン状態を改善しGnRH agonist の長期投与や短期間反復投与を行うことが検討され
ている。
 add-back療法とは子宮内膜の退縮効果は血中エトラジオール50pg/mlにて生じるのに対し
て骨塩量の減少は30pg/ml以下にて始まることを利用し、GnRH agonistにてエストロゲン
製剤を併用し血中エストラジオール濃度を30〜50pg/mlに保つ方法である。

 
通常、子宮内膜癌の発生予防のためにプロゲステロン製剤を併用することが多い。使用される薬
剤は、エストロゲン製剤として結合型エストロゲン(プレマリン)、エストリオール(エストリール)、経皮
吸収エストラジオール(エストラダームTTS)等を用いるが、エストラダームTTSは安定した血中濃度
が得られる
とされておりプレマリンと共に用いられる機会が多い。プロゲステロン製剤としては酢酸メ
ドロキシステロン(MPA、プロベラ)、ノルエチンドロン(ノアルテン)が使用されている。
 投与方法は GnRH agonist 投与開始と同時に行う方法と2〜3ヵ月送れて行う方法があり、各々、
単発と連続投与がある。

参考図書

(産科と婦人科 第68巻 増刊号 V.腫瘍 P156〜P158
  聖マリアンナ医科大学産婦人科 藤脇伸一郎氏 石塚文平氏 
    より抜粋しました。