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第百七十一章 筋腫じゃない

 行かずに済むものなら絶対に行きたくない産婦人科で、あなたは典型的な子宮腺筋症です、と
告げられて間もなく、担当医が学会で出張になった。その時、大学の医学部の医局から代わりの医者
がやって来た。私が診察を受けると代わりにやって来た医者(私より少し年齢が下で、そのと当時は
35歳くらいに見えた。)は、私のカルテをちらっと見て「子宮筋腫ですね。」と言った。即座に私は「いいえ。
私は、子宮筋腫ではありません。子宮腺筋症です。」すると医者は、「ああ子宮腺筋症ね。筋腫と同じだ。」
と言うではありませんか。私は、「腺筋症と筋腫は違います。」と語気を強めた。どうやらこの医者にとって
は、腺筋症も筋腫も同じ病気だという認識らしい。二週間後、また別の代わりの医者もまた同じような認識
を持って診察をしているようだった。

 腺筋症を持つ身にしてみれば、筋腫と一緒にして欲しくはない。筋腫の人だって腺筋症と同一視される
のは不本意だろう。第一、実際に腺筋症と筋腫は医者がどう考えて診察・治療をしていようが全く異なる
病気なのだ。内科や外科の医者ではなく専門家であるはずの産婦人科の医者がこんな具合では困る。
代わりにやって来た医者たちの話し振りから考えるに、「筋腫(多発性の)も腺筋症も子宮を全摘しなけれ
ば完治は望めない。過多月経から貧血を起こす。いずれは子宮を全摘しないとならない患者で当面は
ホルモン剤治療でお茶を濁す患者。」だと一つに括っているではないだろうか。

 では、筋腫と腺筋症の大いなる差の痛みについてはどうなのか。彼らの頭の中には、筋腫と腺筋症の
最大の違いではある痛みの強弱については全く関心が及んではいないのではないだろうか。痛みは
一般の検査では画像にも映らないし、数値としても出て来ない。だから、彼らにとってはないに等しいの
だろう。痛みを軽く見ることができるからこそ、筋腫と腺筋症を同一視することができるのだろう。

 腺筋症は、筋腫みたいに知名度がある病気ではない。筋腫ほど有名ではないが、内膜症は、環境ホル
モンや若い女性の不妊症の原因の筆頭としてマスコミが度々取り上げることで、どうやら内膜症という
病気病気が筋腫とは別にあり、痛みが強くて若い女性の妊娠を難しくしているようだという曖昧だが、
認識が一般の人たちにも高まってきている。それでは、腺筋症はどうなのか。いまだに子宮腺筋症
という病名を聞いても、「子宮は分るけれど、その後のせんきんしょうって何?子宮の病気みたいだけ
ど。筋腫とどう違うの?」そういう反応が多いのではないだろうか。

 病名が知られていなければ当然、一般の人たちの患者に対する関心も低い。関心が低いと国も
研究に熱心とはならないし、研究者も増えない。従って、治療方法も開発されなかったり遅れたり
する。病気と病名の正しく一般の人に認知されてこそ、腺筋症患者も救われると思う。

第百七十二章 気力 

 腺筋症に限らず病気の多くはそうだが、病気の進行と共に症状は段々ときつくなってくる。私の場合
は、初潮が11歳と6ヵ月だった。生まれて初めて迎えた生理は、こうあっては欲しくはないと恐れてい
た通りに、脂汗と吐き気を伴う強い痛みを伴っていた。初潮での激痛は、子宮が未熟なために引き起こ
される類いの機能性月経困難症ではなく、子宮に何らかの病気がある器質性月経困難症を感じさせる
には十分なものだった。

 中学に入ると痛みはますますひどくなった。それと同時に段々血の塊が増えてきた。塊の大きさも
徐々に大きくなってきた。そして高校生になる頃には市販の痛み止めをその用法通り飲むのが難しく
なってきていた。4時間時間を置いて飲むことを守るためには痛みに耐えなければならない時間が
長くなってきていた。それからは、痛みも過多月経の度合いも一直線状に強まっていった。だが、それ
でも、最初のうちは生理ニ日目と三日目の二日間痛み止めを飲んでいれば対処できた。それが、いつ
のまにか生理三日目を過ぎても痛みも出血も良くならずに、それが生理一週間後になってもぱっとし
なくなっていった。貧血の度合いも過多月経が進むにつれてひどくなっていったが、長い時間があった
ので体の方がそれなりに適応できていた。もちろん、息切れや頭重や動悸などの症状は出てはいた。

 それでも、この時点までは、まだまだ、「こんな生理痛なぞには負けないぞ!他の日は生理で駄目
な分だけ頑張るぞ。」という気力があった。それが決定的に気力を失わせていった原因となったのは
31歳の秋に起こった。その日、私は母が膵臓がんで再入院している地元の病院への道を急いで
歩いていた時のことだった。「ん?何だろう。この痛みは。」病院への距離の三分の一ほど歩いていた
時に、それまでは一度も感じたことがない場所、左の太ももの付け根に鈍痛を感じた。そして、それは
歩いているうちにどんどんと強さを増していった。この痛みは、その後、何度も体験するようになるとは
その時は想像はしていなかった。それまでは、生理の前ではあれ生理中であれ、生理後であれ、この
痛みは生理に関する痛みだなと納得ができる痛みであり、痛む場所も子宮からそう離れてはいなか
った。

 痛みが子宮の周辺から離れた時点で、私の腺筋症との闘いは別の次元に進んだように思う。左足
の太ももの付け根に痛みが出る前数回の生理時に、子宮内膜が剥がれて引っ張られるような強烈な
痛みを感じた。そしてその痛みは生理が終わった後もずっと続いていた。このこととその後に起きた太
ももの痛みとは関係があると思っている。左足の太ももの痛みが出た後、母の病気の看護とその後の
母の死で心身共に疲れきったためだろうか、腺筋症が加速度的に進行した。それと共に私の気力も
失せてきた。毎日生きていくだけで精神的な状態よりは肉体的な面で手一杯の状態だった。毎日鈍痛
であっても痛みが一日中続いている生活はまず肉体的に疲労させた。そして、いつまでこの痛みが続く
だろうという精神的に不安となっていった。市販の痛み止めで何かと凌げればと願っていた。だが、それ
も39歳で破綻した。いくら市販の痛み止め飲んでも効いてもせいぜい一時間で、30分がいいところと
なっていった。

 毎日が痛みという悪魔に支配されるようになってきて、強い貧血の症状も出てきたこともあって気力も
衰えてきた。「生理の時は駄目たけれど生理が終われば頑張るぞ」と考えられなくなり、毎日の地獄が
生理時には灼熱地獄と化すくらいに思えてきた。そして、遂に市販の痛み止めを飲んでも効かないこと
が増えてきた。もう頑張れないと思った。私の場合は、医者嫌いで産婦人科は特に避けたい人だった
ので、産婦人科に行く時間が遅れた。他の人の場合は、もっと早く病院へと足を運んでいるだろう。
私は我慢強いと言われているが、それは腺筋症による痛みとの闘いの中でつ培われたとように思う。

 しかし、それにも限界がある。腺筋症は、過多月経があり煩わしいものだ。そして過多月経が引き起
こす貧血もつらい。しかし、腺筋症の激しい痛みに比べると可愛いものだ。腺筋症だけにはなりたくない
と良性婦人病患者が思うのは、全摘以外に根本的に有効な治療方法がないことだけではなく、激痛を
伴う場合が多いことを知っているからだと思う。私が筋腫だったとしたら、ああ本当に腺筋症や内膜症
でなくて良かったと思うだろうなと想像をする。こんなことを書くと筋腫の人に筋腫だって痛いし大変だ
と文句を言われるかも知れないが、腺筋症の痛みは半端な痛みではないことをもっと多くの人に知って
もらいたい。痛みは目に見えないので、そのつらさを分ってもらえない。腺筋症患者が一番分って欲しい
のは、痛みの存在がいかに大きいかということだと思っている。

第百七十三章 免疫

 免疫というと何か良いことであるかのようなイメージがないだろうか。病気にならないように体が
細菌やウイルスと闘う。たのもしい体内の戦士たち。そんなイメージではないだろうか。だが、免疫
は良いことばかりとは限らない。免疫が原因で起こる病は多い。そして、免疫が原因の病気は難病
とされて治療が難しいものが多い。腺筋症もまた免疫が原因となっている可能性が高いようだ。

 どういうことか。人間ではどうかはまだ謎だが、マウスの実験ではプロラクチンという授乳に関係
しているホルモンを過剰に与えることによって腺筋症のマウスを作り出すことに成功しているという。
子宮や卵巣の近くに投与するよりは間脳にある脳下垂体に投与する方が高率に腺筋症を発症させる
ことが可能らしい。脳下垂体にプロラクチンを投与するとマウスの98%近くが子宮に腺筋症ができる
という統計もあるようだ。そして、マウスの場合は、抗プロラクチン剤を投与することによって治療も
可能らしい。

 これがすぐに人間に応用できるとは限らないが、抗プロラクチン剤は使ってみる価値はある。特に
初潮を迎える以前に使用すれば、腺筋症患者を劇的に減らすことが可能になるかも知れない。
サプリメントであるリプロキュアにも同じような作用が見られるという。だが、現実にはそのような話し
は聞かれない。恐らく、人間に試してみた医者もいるだろうから、試してはみたもののはかばかしい
効果は見られなかったのだろう。それとも、腺筋症の病気の解明に情熱を持つ研究者が世界には
いないだけなのだろうか。

 いずれにしろ、マウスの実験は、腺筋症は卵巣ホルモンや卵巣や子宮そのものも働きよりも
より上位の脳で起きている免疫異常ということを意味しているように感じる。痛みを感じるのも
病巣はお腹の中にあったとしても、それを痛みと認識するのは脳だ。脳の不思議を解明すること
は、腺筋症の病気の解明にも繋がるかも知れない。

第百七十四章 内側・外側

 内側と外側。一体何の内側と外側なのか。それは子宮筋層の内側と外側のことだ。私の痛みは
子宮筋層の子宮内膜に近い側で起きる痛みと子宮筋層の子宮奨膜側近くで起こる痛みとでは
痛みの感じが異なる。子宮筋層の内側の痛みは、鋭く、いかにも月経痛らしき痛みだ。そして昔
馴染みの痛みでもある。外側の痛みは最近強く感じているもので、内側からの痛みよりも痛み自体
は弱い。しかし、いつまでねちねちと続く。何故かは分らないのだが、腺筋症の痛みは腰、ウエスト
下のど真ん中からお尻にかけての当たりに強く出る。その痛みは、内側からの鋭い痛みの場合には
指で押したりこぶしで叩いたりすると痛みが和らぐ。しかし、外側からの鈍痛にはさっぱり効かない。
隔靴掻痒、どうにもこうにも痒いところがあってもなかなか掻けない状態なのだ。だから、ロキソニン
が効いてくれるを待つしか手がない。

 生理の時以外に痛みがどんどん出てくる前には、たまにしか外側から来る痛みは感じなかった。
外側から来る痛みの度合いと起こる回数が増えたのは、腺筋症が悪化してきたからだ。私の場合
の病状の悪化は、子宮の筋層内での病巣の分布が内側から外側へと広がっていったためのよう
に感じる。もちろん、病巣の部分の面積や数が増えたこともあるが、それよりも内側から外側へ
病巣が進んだことの方が大きい気がする。筋腫でも腺筋症でも子宮内膜に近くに病巣があると痛み
も出血も強いのが常識となっている。だが、腺筋症の場合、それに子宮奨膜近くに病巣が広がった
場合は、鈍痛と生理の日以外の痛みが出て、生理時の出血の出がうまくいかなくなるのではない
かと思う。考えられる理由としては、外側の子宮筋層内の病巣が増えると子宮全体をリズミカルに
動かすことが難しくなるのではないか。子宮筋層は一日あるいは月周期の中で脳からの命令を
受けて、微妙に動いているそうだ。病巣だらけの子宮筋層は、健康な子宮筋層の時のリズムと
同じように動こうと無理をする。その無理が余計な痛みや経血の排泄に支障をきたすのではない
かと思う。

 外側の病巣は子宮をより固くする。子宮は、月経の時に不要となった子宮内膜を剥がして排出
する。それと共に、子宮筋層全体を使って規則的な動きで胎児を体外へ送り出す。子宮内膜の増殖
や排泄が、来る妊娠と出産の準備運動とすれば、子宮筋層の動きは、陣痛の準備運動と見て
ようと思う。だから、腺筋症の病巣が子宮の柔軟性を奪うことが痛みを誘うのではないだろうか。

第百七十五章 好み 

 好みといっても食べ物の好みではない。ここで言う好みは、腺筋症の病巣の好みのことだ。
胃がんは、何故かよく卵巣に転移をする。肝臓や肺に比べて流れている血液の量も少なく、
また胃との距離も遠い。だから、何故胃がんが卵巣に転移することが多いのか長い間不思議
に思われていた。それが最近、どうやら卵巣が胃がんから出ている物質に反応をして積極的
に胃がんの細胞を手招きしている様子が観察されたそうだ。

 さて、内膜症と腺筋症だが、こちらの好みはと言うと、これが神経組織なのだそうだ。神経
組織が腺筋症を呼ぶのか。はたまた腺筋症が神経組織を必要とするのか。とにかく抜群の
相性の良さなのだそうだ。道理で内膜症も腺筋症も痛みが強く出るはずだ。ならば、痛みが
出ないタイプの内膜症や腺筋症は、どうなのだろうか。この手のタイプの内膜症や腺筋症は
神経組織を避けているのだろうか。痛みがないタイプと痛みが出るタイプの差は一体どこに
あるのか。腺筋症の人たちの神経組織に病巣が及んでいるかいないか大規模な研究が行わ
れないものかと思う。

 病気に好みも何もないけれど痛みが強い病気にはなりたくないものだ。って、もう既になって
いるけれど。(笑)

第百七十六章 耐性と依存性

 痛みのコントロールと言えば、真っ先に出てくるのが、がんの治療だ。やれ、がん痛みで
苦しむ時代はもう終わったのだのがんの痛みのコントロールは世界的にはもう確立されてい
る。それをきちんと守れば殆どのがん患者は痛みに苦しむことはない。そして、モルヒネなどの
医療麻薬の使用を恐れてはならない。快楽のために使う場合と異なり、痛みを感じている患者
の場合は、麻薬を使うことによって痛みは取るがセロトニンなどの快楽物質は出ず、従って麻薬
を欲しがる依存性もない。但し、薬の分量が段々増えてくる。依存性はないが耐性は起きると
いうことだ。

 かのアメリカの美の象徴とも言われたマリリン・モンローも内膜症で、その強い痛みを取る
ために時々モルヒネなどの麻薬を使っていたという。私も時々ロキソニンを飲んで効くのに時間
がかかる痛みや効きが悪い時は、モルヒネでも何でもいいから早く効く薬が欲しいと思う。
がんの痛みではないけれど、麻薬を使えば健康な人と変わらないかそれに近い生活を手に
することができる。だから、麻薬は魅力的だ。だが、依存性はないにしても耐性はできる。
耐性ができるとあと数年間の辛抱とはいえ、麻薬の飲む量も増えていくことだろう。これが
20代だとしたら、数年どころではない。やはり麻薬は耐性が問題だ。安易に使うべき薬ではない
ようだ。

 麻薬に限らず、全ての薬に耐性がある。私の場合で考えてみても、市販の薬、具体的には
シオノギ製薬のセデスだが、これが頼みの綱だった。何度セデスのお世話になったことか。
色々な解熱鎮痛剤を試してみたのだが、セデスが一番効いた。ただ、あのでっすかいボタン
みたいな大きさには参った。飲みづらいものの飲んで喉を通過するまでの間に溶けるまでに
漂うあの苦味が何とも嫌だった。薬効成分は錠剤の中のほんの少しに過ぎないのだから、
何とかもっと小さな飲みやすいものに変えられないものか。表面だけでも苦味が出るのを防げ
ないか。セデスは11歳の時から飲み始めて、31歳くらいまではよく効いてくれたと思う。
セデスが効かなくなってからの31歳から39歳までは、それこそ薬の耐性が高まり、段々と
飲む量が増えた。そして、37歳くらいからは、飲む時間の間隔も守らずにどんどん飲んでも
あまり効かないことが増えた。そして、39歳を迎えた頃には、気休めにしか過ぎない状態と
なっていた。産婦人科へ行く1ヵ月は飲んでも全く効果がなかった。別の市販の薬はと試して
はみたものの、これもあまり効かなかった。

 ロキソニンを飲み始めて10年。まだ、効いてはくれてはいるが、以前に比べて飲む量は
増えてきている。やはり耐性ができてきているのだろう。セデスみたいに効かなくなったら
・・・と思うと怖くなる。そうなった時は、全摘をするしかないのかも知れない。

第百七十七章 遺伝子 

 近年、子宮筋腫の発生には正常細胞の周期を調整する遺伝子や癌遺伝子さらには腫瘍を
抑制する遺伝子の異常が深くかかわってることが判明してきたという。子宮筋腫には、20%
〜50%とかなりの頻度で染色体異常が認められるらしい。染色体異常では第7番染色体の
一部欠損、13番遺染色体の長腕欠損、12番染色体の転座などのがあり、これが子宮筋腫の
細胞の増殖や子宮筋腫の増大に関係していると考えられるという。

 筋腫の発生に、染色体異常があるのならば、内膜症や腺筋症にもあるはずと考えるのが妥当
だろう。しかし、それらしき研究発表は知らない。私だけが知らないのかも知れないが、必ず
遺伝子に何らかの異常が出ているはずだ。遺伝子の異常が判明しただけでは治療方法は
見つかるとは限らないが、分るだけでも価値がある。

 遺伝子を解析すれば、私のように初潮時から腺筋症の疑いが濃いタイプの腺筋症と
ある程度の年齢がいってからのタイプの腺筋症とでは、どの遺伝子に差があるのか。
あるいは、遺伝子の発現の時期を決めるものは何か、などについて判明するかも知れない。

 最近の人ゲノムの解析で、人の全てが遺伝子に支配されていると考えている人も多い。
だが、もちろん、遺伝子だけで人生が決るものではない。ただ、用意されているもの以上の
能力は発揮することはできない。ある学者の説によると人間は150歳まで生きていれば、
一度はがんになるという。

 遺伝子は、アミノ酸の並び方しか書かれていない。アミノ酸を繋ぎ合わせるといろいろな
タンパク質が作られる。これが一人一人の人間を再生するための必要なデータの全てを
握っている。タンパク質が決れば、脂肪や水分などは物理法則に従って自然に組み込まれて
いく。だから、筋腫に限らず全ての病気は遺伝子のアミノ酸の並び方の指示に間違いが
生じて起こる。アミノ酸の並び方を簡単に修正できることができれば、この世に難病など
存在しなくて済むようになるのにと思う。目には見えないところで、着々と腺筋症の病巣が
日々作られていく。自分の体なのに治せないのが悔しい。

第百七十八章 甲状腺

 今、考えてみるとホルモン剤、スプレキュアを服用、服用後二年くらい苦しんだホットフラッシュは
更年期様障害ではなくて、スプレキュアの別の副作用である甲状腺異常だったのかも知れない
なと最近になって思う。ホットフラッシュは、急に起きて少し時間が経つと収まってしまうというが、
私のそれはスプレキュアを服用してから間もなく、服用を中止後も長い間続いた。継続して暑がり
で動悸もあった。今から思うと甲状腺の機能が亢進していたのかも知れない。

 痛みと貧血がなくて生活が快適になり、生理や子宮のご機嫌伺いをしなくてもよくなり食べ物も
おいしく、つい食べ過ぎたと思っていたけれど、甲状腺の亢進のためだったのかも知れない。
血液検査をしていないのではっきりとしたことは分らないが、そうだったのではないかと気がする。

 女性は、甲状腺が亢進したり低下したりすることが多い。それがある程度以上の女性に起きた
ら、安易に更年期障害だと年のせいにされたりすることが多いのではないだろうか。第一、医者は
内膜症や腺筋症の疑いがあれば、ホルモン剤を割と簡単に処方するが、その副作用の心配は
さほどしているようには見えない。骨量の低下が心配だと言いながら、ホルモン剤を投与する前に
その人の骨量を計ったりもしない。また、甲状腺の機能に異常があるかどうかの検査をしているか
どうかも疑わしい。

 甲状腺に限らず、スプレキュアなどのGnRHアゴニニストや低用量ピルを使う場合に、使用前の
チェックが甘過ぎはしないだろうか。何度もホルモン剤をし続けることの危険を感じる。

第百七十九章 筋腫と腺筋症

 子宮内膜症の本を読んでいたら、症例として同年齢の筋腫と腺筋症が取り上げられていた。
筋腫の人も腺筋症の人もどちらもホルモン剤を使い病巣を小さくして妊娠・出産を期待しての
治療だ。数年後、筋腫の人は、妊娠し無事出産し、二人の子供をもうけた。だが、腺筋症の
人は、治療の甲斐もなく子宮はどんどん大きくなり、それに比例して痛みも物凄くなっていった。
7年目にして遂に痛みに耐え切れずに子宮を全摘したという。そして、今でも全摘したことには
後悔の念があるという。著者は、これを筋腫と腺筋症になった運命の差といいましょうか、と
述べている。筋腫になる腺筋症になるかは運命の差か。

 母は筋腫で姉は内膜症で腺筋症はない。そして自分は腺筋症。家族の女性で婦人病でない
人は誰もいない。筋腫も内膜症も腺筋症も遺伝が関係していると思うが、どうして母が筋腫で
姉が内膜症で自分は腺筋症なのか。それを決めているのは遺伝子だが、子宮の病気って
多すぎやしないか。健康な子宮を持つ人たちは、二人に一人程度しかいないのではないだろうか。

 筋腫も内膜症も腺筋症も子宮内膜はそれが正常な場所にある子宮内膜ではあっても、そうで
はない健康な女性の子宮内膜にはないエストロゲンを作り出す酵素であるアロマターゼが含まれて
いる。子宮内膜では、アロマターゼがないだけではなく、女性ホルモンの作用を弱める物質も
分泌されているようだ。子宮内膜症に含まれるアロマターゼの量は、筋腫<内膜症<腺筋症の順で
多いという。腺筋症が一番性格が悪いのはこのせいかも知れない。あってはいけないところに
居座っているアロマターゼが悪さをしているようだ。

 以前にメーリングストで、痛みという点では腺筋症は筋腫よりも大変苦しい病気だ投稿して、
筋腫だって痛みがひどくて全摘せざる得なかった。簡単に腺筋症の方が筋腫よりも痛みが
強くて大変だって言って欲しくないと言われた。嫌がらせも受けた。例外はあるけれど腺筋症
の人の方が痛みに苦しんでいることには間違いはないと思うのだが。良性婦人疾患だから
皆同じ病いについての苦しみを抱えている。それは筋腫であろうと内膜症であろうと腺筋症で
あろうと関係はない。第一、筋腫と内膜症と腺筋症は一人で抱えている人も多い。この癒しの
場であるべきメーリングリストにこんなひどい投稿があるなんてと非難された。結局、それが
嫌になって、そのメーリングリストを辞めてしまった。

 私には、腺筋症も内膜症も筋腫も大差がない。同じ良性婦人病疾患だから、筋腫と内膜症や
腺筋症の違いやそことに対する見解を述べてはいけない。率直なところを患者同士のメーリング
リストだからこそ話し合えると浅はかに考えていた。インターネット初心者でメーリングリストに
ついてあまりよく知らなかった。メーリングリストは、色々な考えの人たちがいて、HPとは異なり、
会員のみが参加する閉鎖的な場所だ。掲示板であれば気に食わないと二度と訪問しなければ
いい。でも、メーリングリストでは不快な奴がいれば閉鎖的であるだけに自分が辞めるか相手が
辞めるしかないことになる。これは私の性格には合いそうもない。どうして、堂堂と反対意見を
メーリングリストのメール上ではせず、個人宛てにねちねちと非難攻撃をしてみたり、個人が
開設しているHPの掲示板を荒らし回ったりするのだろう。自分は安全なところにいて、名前も
住んでいるところも知られずに好きな時にいつでも嫌がらせをするのがそんなにストレス発散に
なるものなのか。
 
 インターネットの世界は、私のような人間には向いてないのかも。

第百八十章 視覚 

 夜中、寝ていたのに強い痛みで目が覚めた日は最悪だ。そんな時、私は貧血と痛みで息が苦
しいこともあって、冬であっても窓を開ける。そして、それが晴れた日の夜ならば空の星やお月様
を眺める。そうすると痛みが少し和らぐ。そんな気がしていた。雲が多くて星や月が見えない夜は
痛みも強くたまらなく悲しくなる。でも、所詮は気のせい。気持ち分だけ痛みが軽くなっているの
だと思っていた。痛みには体だけではなく心からくる部分も馬鹿にはできないのは分っていた。

 痛みに関するテレビ番組を見ていると何とこれが幻肢痛の治療として使われていた。何でも
痛みを感じる部分の働きを抑えるには、痛みそのものを感じる大脳の運動野を抑制するので
はなくて、感覚野を刺激すればいいことが研究で分ったのだそうだ。好きなことをしている間は
痛みをあまり感じることがなかったり、好きな映画やドラマを見ていると痛みが少なくなったりした
経験はないだろうか。

 星や月を眺めて痛みが軽くなるのは気のせいばかりではなかったようだ。視覚と痛みとの関係
は本当に不思議だ。切断した腕や足、時には乳房までも幻の痛みが出るという。では、子宮は、
胃は、大腸はどうか。子宮にも幻の痛みはないのか。詳しくは分らないが、足も腕も乳房も目で
見えるものだ。子宮や胃や大腸は開腹しなければ、直接目にすることがない。目で見て姿・形を
脳が記憶している臓器にのみ、幻の痛みは起きているようだ。

 人間の体は、体に何か侵害があれば痛みの信号を発信するのではなく、痛みが起きないように
していて、何かがあった時に、その抑制を取るように出来ているようだ。長い間、痛みの仕組みの
説明に使われていたのが、フランスの哲学者のルネ・デカルトの痛みは縄に火がついて、その火が
神経を通じて痛みを感じる脳に達するという説だ。最近の研究で痛みを感じる仕組みはデカルトが
提唱するような単純なものではなく、様々な要素が関係して起こるものだと考えられている。だが、
これも複雑な痛みの仕組みを解明する説としては十分ではないと思う。

 それにしても視覚が痛みを和らげる。特に動きが激しいものが良いらしい。強い痛みが出た
時は、展開が激しいドキドキできるドラマや映画を見てみようかな。

第百八十一章 お腹の張り

 妊婦でもないのに、お腹がせり出す。そしてお腹が張ってくると痛みも強まる。大体は生理前
から始まって生理中にピークとなることが多い。私が考えるのに、これは子宮が経血を出すため
に必要な収縮力が出ず、何とかして経血を押し出そうと苦悶しているせいてはないかと思う。
血を吸って子宮自体が大きくなっていることもあるだろうが、妊娠したこともないのに、吐き気が
したり、お腹がせり出してきたりして不快だ。子宮を取れば、すっきりとした下腹に戻って着れる
服のサイズも小さくなる。特にお腹の張りがひどい時は、そう思う。

 だが、腺筋症で全摘した人に話しを聞いてみると期待していたほどにお腹は小さくならないの
だそうだ。出ていたのは、自腹の部分が多いということか。生理の時のお腹の張りと共に面倒
臭いのは、とにかくトイレが近いということだ。エストロゲンもプロゲストロンも体の水分を貯蓄する
働きがあるようだ。私が生理が近いなと知るのは、下腹のなんとも言えないどんよりした重苦しい
痛みと共に、体が熱っぽくなることとやけに尿が出るようことによってである。水を飲んでも飲まな
くてもよく尿が出る。夜中に何度もトイレに行かないといけない。過多月経もあるので尿意がなく
てもトイレにはちょくちょく行かなければいけないのだが、安眠妨害もいいところだ。

 筋腫や内膜症の人たちは、お腹の張りやトイレの方はどうなのかなと思う。一般書や闘病記
を読んでもそれに触れた文章はみかけない。血の塊がびっくりするように出て痛みも峠を越えた
頃に、お腹の張りの方もだいぶ良くなっている。だから、お腹が張っている時は、まだまだ痛み
も出血もまだまだだぞと思ってよい。と、これは私の場合だ。

 妊婦でもないのに、陣痛に苦しむ人みたいな生理を毎月体験しているのにも、そろそろ疲れ
てきた。

第百八十二章 婦人科はどうなの

 最近、産科が注目を浴びている。奈良県の妊婦が脳出血を起こしたが沢山の病気から診療拒否
をされた。切迫流産の妊婦にかかりつけの病院や医者がいなくて救急車が動かなかった。受け入れ
先の病院が見つかった時は、既に流産していた。地方にはお産が出来る施設が減ってきている。
遠くまで行かないと出産はできなくなってきている。産科医が不足している。

 でも、産科の医者は婦人科の医者でもあるはずだ。産科は問題となっている割には、婦人科医
が少なくなって筋腫などの病気の患者が治療を受けられずに困っている。婦人科が足りない。
どうにかしないといけない。などという報道はあまり聞かれない。産科が産科医がどうのこうの。
問題だ。そんな感じだ。

 大体、産婦人科という名称からして婦人科の前に産科があるように産婦人科の主流は婦人科
ではなくて産科だということなのか。産まない・産めない女が多い単なる病気の子宮や卵巣は
未来の社会を作る子供を産む女性ほど大切ではないのか。独身・産まない・産めない女の偏見
に過ぎないのか。

 新しい研修医制度ができて、地方の医者不足が問題になる以前から、私が通っていた病院では
妊婦は婦人科の患者よりも診察の順番にしろ何かと優遇されていた。病院で健康な人と病気の人
とか一緒にいる場所は、産婦人科しかない。片方は、皆から祝福されて幸せな診察と待ち時間と
いう人が大半だ。婦人科は皆、それぞれ病いを抱えて痛みや出血、あるいは生死をかけて治療に
望んでいる。

 腺筋症も内膜症も筋腫もそうだが、子宮という臓器という特性のせいもあり、子供が産めるか
産めないかが問題となる。それは良いのだが、それしか問題にしない。子宮がその人が持って
生まれた体の一部であるということに対する配慮がなされていない。そして、命に関わらない
臓器だから、がんなどの命を奪いかねない悪性疾患ではないにも関わらず、悪いものは全部
取ってしまった方がスッキリしていいじゃないか。そうはっきりとは口にしないが、産婦人科医は
そう考えて治療している気がしてならない。

 産婦人科医が足りない。お産ができない。地方では出産ができない。そんな報道の影で
思う。産科の窮状は分った。で、じゃ婦人科はどうなの?婦人科の患者はどうでもいいのか。
産婦人科と言いつつ、産科しか問題にしないマスコミの態度に怒りを感じる。


 
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