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今夜の番組チェック

第七十九章 髪の毛

 10代、特に中学生の頃までは、真っ直ぐで太い髪の毛が自慢だった。母方の祖母もまだ
生きていて、自分も若い頃は、黒くて太い髪の毛が自慢だったと話していた。それが何時頃
だろうか。20代の半ば頃から細くなり、腰がなくなってきた。腺筋症が進行して貧血になった
にも関わらず治療もせずに放置していたせいだろう。今から思うと馬鹿な話しだ。産婦人科へ
行きたくない一心で、過多月経があっても痛みがあろうとまだまだ何とかなると思って、病気の
ことは無視していた。まだ毎日痛みもなく、生理中と生理後何日かの痛みを我慢すれば良かっ
たからだ。しかし、髪の毛は、貧血と体調不良、あるいは市販の鎮痛剤の飲みすぎによる副作
用のせいなのか、段段と張りを失い細くなり、直毛が曲がってきた。髪の毛の伸びも悪くなった。
そして、過多月経がどんどん進行していって体内の鉄その他のミネラル不足がひどくなってくる
と伸びるところが、どんどん髪の毛が抜けていった。そして、白髪がどんどん出てくるようになった。

 間違いなく貧血が進行しているせいだろうなぁと思った。過多月経もちょっとやそっとのもの
ではなく、出血のひどい時は、生きているのが不思議なくらいの息苦しさを感じたものだ。もっと
早く産婦人科へ行くか、せめて鉄剤だけでも買って飲んでいれば、あんな苦しい思いはしなく済
んだはずだ。でも、あの頃は、とにかく産婦人科へ行ってしまったら、ホルモン剤か全摘しかない。
とにかく何もかにも病気に関しては何も考えたくないと思っていた。30代に入った頃になるといつも
頭がどんよりとしていて、物を覚えるにも時間がかかるようになった。姉にそう言うと「私も30歳を
過ぎてから記憶力が落ちた。」と言ったので、これは年のせいかと思った。もっとも、35歳、40歳、
45歳と年が進むにつれて、その度毎に、姉はいつも、○歳を過ぎたら記憶力が落ちたと今でも
言い続けている。(笑)貧血治療を始めてヘモグロビン値が上がると私の記憶力は戻ってきた。
そして、その後は、それほど下がっているという自覚はない。(もっとも自覚がないだけかも知れな
い。)

39歳で、死んだ母が夢に出てきて、このままでは死んでしまうかも知れない諦めて産婦人科
へ行った。そのくらい今でも産婦人科は大嫌い。医者も看護師も大嫌い。他の科も嫌いだけ
れど。偏見かも知れないけれど、医者で一番口と態度が悪いのは産婦人科という思いが昔
からある。良い先生もいるとは思うけれど、私は産婦人科が嫌いだ。もっとも、病院が好きだ
という人はそんなにいないだろうな。(笑)地元の自助グループでも、産婦人科という患者は女
限定だという特殊な診療科目での不満の声が出る。その話しを聞いているだけで、もうああだ
から産婦人科って嫌なんだよね、と思ってしまう。

 髪の毛と腺筋症の深い関係は、ホルモン剤治療でもある。白髪がどっと出てきたのは、スプレキュ
アを使い始めてからだ。そして、その後、スプレキュアを止めてから、徐々に白髪が減ってきている。
でも、昔のような太くて元気な枝毛のない黒髪には戻れそうもない。生理がなくなって貧血と縁が
切れれば、また綺麗な髪に戻れるかも知れない。髪は女の命とも言う。女の命を取り戻せる日は
来るだろうか。 

第八十章 鉄の力

 過多月経が進んできたせいか、それとも腺筋症が進行して痛みがある日が多いせいか、だるくて
眠い日が増えてきた。夏に弱く冬には一層弱くなった。鉄剤を胃の具合と様子を見ながら飲んでは
いるが、一度大出血をすれば、こつこつ溜め込んだ鉄分も一気に失われてしまう。たった一つの臓器
の故障が全身に悪影響を及ぼしている。体全体のことを考えれば、子宮のために体全体を犠牲に
していると言えるだろう。私は、諦めの悪い患者のようだ。

20代の私は、40歳には子宮の将来ついて、決心がついているものだと想像していた。11歳から
30年間も苦しんでいれば、取るなり温存するなり、それぞれに気持ちが固まってぶれることはない
だろうと思っていた。しかし、現実は、いまだに決心がついてはいない。若い頃は、これほど腺筋症
との付き合いの中で、体がボロボロになってしまうものだとは思ってはいなかった。貧血や痛みによ
る疲労は蓄積されてボディーブローのように後で効いてくるもののようだ。何だかんだ言っても若い
頃は気力だけでなく体力も復元力もある。しかし、年と共に予備力がなくなっていくもののようだ。

 もう限界だと思う。いや、限界も超えてしまったようにも感じる。40歳前後で全摘する人たちが
増えてくるのもよく分かる。雪だるまと同じで、つらさの度合いは、最初は少しずつしか進まないが、
段段ときつくなってくる。これがあと10年も続くのかと思うともうここで限界だと思う。私もそう感じた。
40歳で全摘を勧められて素直に従っていれば、今ごろは、生理痛にも腺筋症の痛みにも苦しむ
こともなく、貧血もなく、だるく・寒いと嘆いている自分もないと思う。だから、全摘を選択した人たち
は賢明だなと思う。決断できたことが羨ましくもある。子宮に何故こだわるのか。女は子宮がないと
ダメと思うのか。今時、そんなことはない。と何人の人にも言われた。でも、できない。

 子宮を取ること自体には、もう未練はないのだが、結局のところ、手術が嫌だと分かった。医師
を信用できないのだ。へたにいじって、全摘前よりも悪い状態になりそうで嫌なのだ。甘い考えかも
知れないが、内科的に薬を飲むなりして何かと無事に閉経まで行きたいと思う。痛みが強くなって
毎日それが続くようになってくると貧血の治療は後回しにしてしまう傾向がある。しかし、貧血治療
は、体調を整える上では、痛みと変わらないくらいに大事なことだ。貧血も慢性になってしまうと意外
と自覚症状がなくなるが、体のいたるところに無理な力がかかっている。

 何となくだるいかったり眠かったり、異様に寒かったりする時は、貧血だと自覚して、きちんと鉄剤
を飲んで治療に努めなければいけない。疲れやすいのは、年のせいだと思わずに鉄剤を飲んでみ
ることが大切だ。虫歯の原因となる細菌も鉄が大好きだという。しかし、同時に酸素が苦手だ。鉄
が豊かな血液に侵入をするのだが、赤血球にはヘモグロビンがあり、酸素が多いので、ここには住
めない。どこに住むかというと血小板に住むのだそうだ。虫歯菌は、糖尿病や心臓病や動脈硬化に
も関与しているという。血糖値が上がると虫歯や歯周病が増えるし、血糖値のコントロールがうまく
いくと虫歯や歯周病も良くなる。そういう相関関係がある。だから、口腔ケアと婦人病との間にも相関
関係があるかも知れない。

 貧血という奴は、腺筋症患者の生理の時のように急にヘモグロビン値が下がるような時には、
しっかりと自覚症状があるが、それを過ぎてしまい慢性的となると寒いな、何となく頭が重いな
最近、物覚えが良くない、すぐ疲れる、気力が湧かないという何でも年のせいにできそうな症状
ばかりになるので、貧血だとは思うがそれほどのダメージを受けているとは思わないままでいる。
でも、実は、鉄には、大きな力があるような気がする。腺筋症の患者には、うつ状態になっている
人が結構いる。実は、これも鉄不足のせいのような気がする。鉄が足りなくなると気力が失せて
くる。胃の具合が悪くても鉄剤を一生懸命に飲むと色々とやろうとする気持ちが湧いてくるのが
分かる。うつ状態には、抗うつ剤と言うけれど私の場合は、鉄が効く〜っ!と感じている。鉄は、
太古の昔、まだ生物が酸素を使って生命活動していない頃から必須のミネラルだった。鉄には
偉大な力が潜んでいると思う。

第八十一章 タヒボ茶とピクノジェノールと尿と生理と

 リラッコさんから痛みにはタヒボ茶が効くと聞いて、早速試してみたいと思ってはいたものの具合
が悪くて、なかなかドラッグストアへ行くことができなかった。が、ようやくドラッグストアへ行き、念願
のタヒボ茶を手に入れた。タヒボ茶という名前は、良く耳にしていた。というのも、北海道では、がん
予防と習慣成人病の予防と緩和にどうぞとのテレビCMが流れているからだ。親類縁者にがん患者
が多い私は、タヒボ茶イコールがん予防と思っていた。だから、リラッコさんから、腺筋症の痛みに
効果があると聞いて、驚いた。しかし、一時期、有名になった白樺の木から取れるバノナアナタケ
もロシア皇帝のがん治療に使われ、がんの痛みにも効果があるのだそうだ。だから、タヒボ茶も
それと同じようなものかも知れないと思った。がんも腺筋症も腫瘍である点では同じだから、がん
に効くものは腺筋症にも効くのではないかと思う。もっとも、腺筋症は腫瘍ではなく類腫瘍つまり
腫瘍のようなもの、腫瘍に似て非になるものと考える学者もいるが、私自身は腫瘍だと思っている。

 タヒボ茶は、2グラム入りが34包が入っていて、定価が6,800円もする。はっきり言って腺筋症の
痛みに効果がある。リラッコさんの体験談を聞かなければ、貧乏人の私は、商品を横目に見ながら
通り過ぎることだろう。痛みに弱い私は、戸惑いつつも物は試しとタヒボ茶一箱を購入してみた。
私が買ったタヒボ茶の場合は、この2グラム入りの一包みを一リットルの水から5分間ほどやかん
などで沸かし、その後は12〜15分ほど弱火でぐつぐつと煮出して飲むタイプのようだ。その他に
紅茶のように、お湯を注いで飲むタイプもあるようだ。味は、少しハッカが入っている薄味のウーロ
ン茶を飲んでいるような感じだ。決して飲みにくくはない。でも、タヒボ茶って、ブラジルの国の木にも
なっているくらいだから、結構、ブラジルでは一般的な木ではないのかなと思う。その割に値段が
高いのはどうしてだろうか。と貧乏人は私は考えてしまう。

 さて、肝心の痛みに対する効果だ。飲んで三日目から、痛みが和らいだ。おっ、効いていると
喜んだ。が、とにかくこのタヒボ茶、尿が沢山出る。日本茶でも利尿作用があるが、タヒボ茶は
それ以上だ。1リットル飲んで3リットル尿が出る感じだ。煩わしい。でも、トイレ通いは大変だが、
確かに痛みは軽くなった。ロキソニンが一日2錠のところが1錠で済むくらいに痛みが軽くなった。
完全に痛みを感じない日もあった。でも、尿があまり出なくなってきたなという頃、飲んでから三週間
くらい経過したくらいから、痛みが復活してきた。

 尿と言えば、ピクノジェノールの場合は、毎日痛い痛いという生活になってから飲むと飲んでから
きっかり二ヶ月間は、痛みに効果がある。しかし、その間は、タヒボ茶と同様にトイレが近くて大変
なのだ。そして、二ヶ月が過ぎて痛みが出てくるようになると何故か、こちらの方も尿の出が普通
の状態に戻るのだ。まるで、尿と共に痛みが出て行っているかのようだ。不思議でならない。そして
もう一つ不思議なのは、何故かタヒボ茶もピクノジェノールも飲んでいる間は、生理が来ないか来ても
少ししか出血せずに終了してしまうことだ。痛みもなくスプレキュアなどホルモン剤も使わないのに
つらい生理もなくて体は楽なのだが、それが長引いてくると体の中に毒素が溜まってくるような不快感
が出てくる。そしてイライラしてくる。そこで、服用を中止すると間もなく生理がやってきて、その不快感
から解放される。腺筋症のメル友に聞いてみるとタヒボ茶の時は知らないが、ピクノジェノールを飲んで
いる時は確かに生理が来なかった、長引いたという人がいた。ピクノジェノールについて書かれた医者
の本によると腰痛患者が痛みがまるで尿に変わったかのようにどんどん尿が出て、出来るとすっかりと
痛みが消える症例が出ている。でも、生理の場合には、そのような記述はない。

 タヒボ茶の効き目が切れてロキソニン漬けに戻った。毎日毎日痛い。つらい。そう思った時、そうだ
こんな時は、ピクノだ。しばらくの間、飲んでいないし、とまた飲み始めた。ピクノを飲むとこれが効く。
ピクノは、私の体質に合っているようだ。ピクノが切れたらタヒボ茶、タヒボ茶が効かなくなったらピクノ
と交互にロキソニンと合わせて飲んでいくのがいいようだ。多少は高くても確実に痛みに効く体に優しい
健康栄養補助食品なんてどこかにないだろうか。私の場合は、木の樹皮が効くようなので、私が研究者
ならば、色々な木の種類の樹皮のエキスを試してみると思う。痛い時にお腹を触ってみると硬いデブな子
宮がバイクで夜の国道を暴走族が走っているような気がする。(笑)誰か私の子宮に集う暴走族を退治
して下さ〜〜ぁい。

第八十二章 量と質

 テレビで生物学者で長年病いと闘い続けてきた柳澤桂子さんが出演していた番組を見た。
闘病生活36年。本当に長い月日の間、柳澤は苦しんで来られたのですね、とインタービュー
をしていた人が発言していた。36年。本当に長い月日だ。私が腺筋症になって、医者は否定を
していたが、丁度36年だ。初潮の時から、しっかりとした普通ではない生理痛を感じた。そして
その痛みは、一度も良くなることもなく、過多月経もどんどん進んだ。ウエストが細くてお腹には
贅肉がなかったのに、何時の間にかウエスト回りが増えていった。そして、ぽこっとお腹が出て
きた。出てきたお腹の肉は指では掴むことができない硬い板のようだった。そのうち、やや球面
から次第にはっきりとした球面を感じるようになってきた。体は太らないにお腹だけが大きくなって
いく。私の子宮は内部に子供を宿すこともなく、その大きさを増し続けていった。

 筋腫で大きくなった子宮に悩む女性が医者から、「子宮は筋腫でいくらでも大きくなり続ける
ものだ。だから、筋腫が小さくなる、子宮が小さくなるなんて考えなさんな。あなたの場合は、40歳
を超えているし、子供ももう既に二人もいる。今更何も出産をするという気持ちもないでしょう。全摘
なんて簡単な手術だ。何故、そんなに子宮を残すことにこだわり続けるんですか。」と言われたと
いう。40歳を超えた子宮は、何の役にも立たないのか。40歳を超えても出産する女性は今日ザラ
にいる。合計特殊出生率の出産可能年齢は、15歳から49歳だ。子供を産んだ後の子宮は、簡単
に手術をして取り去ってもいいのか。本当に子宮の全摘は簡単なものなのか。

 翻って自分の場合を考えてみる。私にとって、子宮は苦しみの元凶だ。これから結婚をする。まして
や出産することはない可能性が高い。一般の人は勿論、産婦人科医は子宮全摘がベストだと言う
ことだろう。全摘した後、多少の更年期様障害あるいは更年期障害が起きている人がいるが、大体
の人は、快適に過ごしているようだ。ただ、全摘後に感じる心の寂しさについては、人様々のようだ。
また、少数派ながら、全摘後はむしろ生活の質が悪化したという人もいる。全摘後に、子宮を取った
ことがまるで引き金となったかのように、次々と新たな病気に見舞われているという。医者は、患者
に不安感を抱かせないためにと考えて、手術は簡単に済むと言うのだろう。しかし、実際、今までの体
内リズムを崩し、復元力があまりない人間は、手術をきっかとしてバランスを崩してしまうのだろう。

 医者は、全摘後の心の問題については、産婦人科の領域ではないと精神科を勧めるらしい。心
と体は一体であるといった、古代医学の祖であるヒポラテスの指摘は、今の時代の大多数の医者
の眼中にはないらしい。私は、手術後の体の問題と同時に心の問題を考えてしまう。それは杞憂かも
知れないが。ロキソニンを飲んで痛みを感じずに行動できる時の自分は、とても働き者だ。こんな時間
がずっと続く幸せが全摘の先にあると思うと全摘がとても魅力的に感じる。

 若い時は、腺筋症の病気の進行について、段階的な質の違いを感じた。生理の直前から感じる
不快感が段段、前倒しとなり、生理中に感じる痛みの期間が徐々に延びていった。そして、生理が終
わっても暫くの間、子宮内膜が剥がれ続けているような痛みを覚える日がどんどん長くなっていった。
経血量も普通の日用のナプキンを使えたのが、多い日用のものに代わり、夜用となり、超ロングに
変わっていった。

 そして、どんどん年を取るにつれて、腺筋症の症状は質から量へと変化していった。どんどん増え続
ける経血量に、それに比例して、どんどんと進行する貧血。そして、何よりもお腹の上からも触ることが
できる子宮のサイズは確実に成長していった。子供の頃、私が子宮について悩んでいた中学生だった
30数年も前の家庭の医学書には、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症(しっかりと載っていた)は、
全て最終的には症状が進めば全摘しかないと書かれていた。しかし、更年期まで逃げ切れば、閉経
にならなくても症状が緩和されて手術はしなくても済むと書かれていた。そして、その時に書かれてい
た更年期の年齢は、40歳からで、47歳ともなれば閉経している方が自然といったのだった。その医学
書を読み、45歳まで何とか切り抜ければ子宮とのトラブルはおしまいになるんだと思ったものだ。

 しかし、現実は、47歳のいまも闘いは続いている。女性ホルモン分泌自体は、35歳あたりがピーク
で後はどんどん低下する一方で、40歳を過ぎたら卵の数も一万個を切り、女性ホルモンも若い頃の
半分以下になるので、婦人病の症状も随分と緩和されてしかるべきだ。内膜症は、35歳を過ぎると
痛みも楽になるらしい。筋腫も大きくなりにくくなるらしい。だから、腺筋症の症状も緩和されて当然
だと思う。でも、痛みのある日はどんどん増えていくし、過多月経だって、ちっとも良くならない。

 年を取ると質よりも量だなと思う。質的には、一個一個の病巣それ自体のパワーは落ちてくるが、
今まで蓄積してきた病巣の数が多くて、相対的に痛みも経血量も増えていくのだろう。貧血や痛み
など体に対するダメージだって、若い頃は、余裕でカバーできるが、段段とごまかしたり、他の機能
を犠牲しないといけなくなってきている。若い頃は、ただ必死に病気から逃げてきた。逃げていられた。
でも、32歳の冬に、病気から逃げ切れなくなった。毎日、病気のことを考えるようになった。痛みの
存在が腺筋症であることを忘れさせてくれなくなった。

 腺筋症でいびつになってしまった子宮の形は戻ることは諦めている。ただ、今は、痛みから解放され
たいと願っている。

第八十三章 雪かきと痛み

 32歳。母がすい臓がんで入院している年の冬、左脚の付け根に生理の期間でもないのに、鋭い
生理痛に良く似た痛みを感じ始めた。その年の夏、おコメやジャガイモの箱など重いものを持つと
暫くの間、腹膜に強い痛みが走るようになっていた。そして、その痛みは長時間続くようになっていた。
腹筋が弱ってきていて、たまに重いものを持ったので筋肉痛が出るのだと家族には言われたが、思え
ば、ある頃から運動などの負荷がかかると腺筋症の痛みが起きるようになっていたのだと思う。

 雪かきは、北海道の豪雪地帯に住む人間の宿命だ。確かに大雪後の雪かきは大変だ。体の節々が
痛む。でも、子宮からくる痛みが起きることはそれまではなかった。32歳の冬を境に長時間の雪かき
作業後に、痛みが起こるようになった。雪かきをしている間は痛みは起きない。二時間くらい雪かきを
した後に、家へ戻り、暖まってくると最初は、じんわりと痛くなり、そのうちに急激に痛くなってくる。それ
が分かってから、雪かきが終わると同時にロキソニンを一錠飲むようにしている。

 雪かき後に、体を触るとお尻やお腹はとても冷たくなっている。実際は、そんなに冷えているわけでは
ないのかも知れないが、体の奥にまで冷たさが広がっているように感じる。普段、ロキソニンを飲むと
大体一時間半くらいで効いてくる。しかし、雪かき後は、何故か一時間半くらいの時間では効いてくれない。
短くても2時間半はかかる。普通は4時間もしてからようやく効いてくる。それではと事前に雪かきをする
前にロキソニンを飲んでみるのだが、雪かき後にやはり痛みが起きてしまう。無論、ロキソニンを飲まない
時に比べて痛みは軽い。しかし、何回かに一度は、痛みが強くなり、更に痛みを止めるためにロキソニン
を追加して飲まないでいられなくなることがある。というわけで、雪かき後にロキソニンを飲むことが多い。

 冷えを治せば病気は治る、という本が出ている。体が冷えれば痛みが出てくるので、寒い戸外での
雪かき作業は痛みには良くないのだろう。毎年のことながら雪は降る。腺筋症患者は寒いところに
住まない方が賢明だ。ましてや長時間雪かをしないといけない地域には住まないことだ。

 若い頃は、腺筋症は生理の期間の範囲内の期間限定だった。長時間の雪かきや重いものを持つ作業
が痛みを引き起こすようになるとは考えていなかった。腺筋症は、心臓病の狭心症の発作に似ている
ように思う。腺筋症は万病の元・・・かも知れないなぁ。

第八十四章 牽引痛

 私が初めて牽引痛を感じるようになったのは、32歳の時だった。生理で子宮が痛いのは当然として
脚の付け根にまで痛みが出始めた時は、また厄介なことなったと思った。牽引痛は、一度現れたあと
は、ずっと続いている。酷い時は、痛みだけではなく、痙攣まで起きる。痛みもただ引っ張られている
ように感じるものから、太ももの筋肉、特に前側がパンパンに硬くなり、痛いと同時に気持ちが悪くなる
ものになっている。酷い肩こりが太ももにやって来たような感じだ。最近では、太もも以外にもふくらはぎ
にまで及んできている。血の巡りが悪いのだろう。血の巡りが悪いのは、何も頭だけではない!(笑)

 子宮の痛みもつらいが、この牽引痛というのもつらい。何しろ、歩く度に痛みがあり、しかも、痛みが
増す。痛みは、子宮の中だけでいろよと言いたいところだ。が、腺筋症は性格が悪く、子宮は勿論の
こと胃腸や気管支にも影響が出てくる。子宮が痛むと同時に胃腸が不調になる。胃が収縮してげっぷ
は出るし、吐き気が出る。胃酸が逆流してくる。咳が出る。腸は必要以上に活発となり、腸にガスが溜ま
る。痛いなら痛み止めでと思うのだが、玉突き事故のように次から次へと状態が悪くなってしまう。

 ガンで手術した人の闘病記を読むとそれまで健康に自信を持っていたが、病人になって人間は強い
痛みに襲われている時は、ただこの痛みが過ぎ去ってくれることだけを願うしかないと書いていた。
痛みの最中には、何も考えられない。他のことが考えられる程度の痛みになっても不快だ。ガンで
あれば、痛みについて特に説明をしなくてもいい。腺筋症はどうか。子宮内膜症の場合は、環境ホル
モンとの関連で、世間に内膜症は痛みと不妊が主な症状であることが知られた。腺筋症はどうか。

 腺筋症と聞いて、それが子宮の病気であると分かる人は少ない。筋腫と言えば、子宮筋腫。内膜症
と言えば、子宮はつけなくても子宮内膜症だと理解してもらえる。腺筋症はどうか。たとえ腺筋症に
子宮を付けて子宮腺筋症と言っても、どんな病気か想像できない人の方が多いと思う。腺筋症と
漢字で書いても、痛みに苦しむ病だとはソウ想像できない。第一、子宮内膜症というネーミング自体
がピンとこない。子宮内膜組織に良く似た組織が子宮以外の骨盤内に増殖している病態に対して
子宮内膜に症状の症をつけて、子宮内膜症。もっと適切な病名はつけられなかったのだろうか。
腺筋症は、内膜症よりもまだ分かりにくい病名だと思う。筋肉が腺状になってしまう病気ということだ
ろうか。内性子宮内膜症という以前の病名の方が、内膜症の知名度が上がっている今は、しっくり
いく。

 激しい痛みと過多月経の両方がイメージが出来る病名に変更してくれないかしらん。私は、子宮
激血痛症ですとか文字に書けば、つらい病気だと説明しなくても分かるようにしてくれれば、腺筋症
、それって何?内膜症の親玉だとか子宮筋腫の性質の悪い奴とか言わなくても分かってもらえる
ようになると思う。何でも英語を訳せばいいっていうものではないはず。日本人は、膵臓の膵という
文字など和製漢字を生み出した国だ。病名にも一工夫をお願いしたい。

 子宮腺筋症の知名度が上がるには、女性の有名人が闘病記を発表するしかないのかしらん。
腺筋症の患者は、いっぱいいるのに、いまだに治療法も少ない。マスコミもこんなに一般的で女性
の生活の質を悪化させ、もしかすると少子化の一因になっているかも知れない病気なのに関心が
なさ過ぎる。もっと婦人病について取り上げる番組や記事が増えていいと思う。

第八十五章 やけに尿が出る

 やけに尿が出る。腺筋症が進み、子宮も大きくなってきたせいもありトイレは近い。それとは別に
生理が始まる二・三日前になるとやたらと尿が出る。トイレが面倒臭いのであまり水分を摂らない
ようにしてみても尿が溜まる。生理が始まると経血が出てきてトイレに行く回数も増える。でも、
今までは生理が始まって三日くらい経つと落ち着いてきたものだ。それが最近、ひどい貧血となる
ようになってから尿が近くて量もたっぷりの状態が長く続くようになってきた。最近は、飲んでも飲ま
なくても関係なくトイレが近いし、水分を摂らないと脳梗塞になりやすいということもあり、意識して
水分を控えることもあまりしなくなった。

 鉄剤を飲んでいるとはいえ、ひどい貧血の状態が長い間続いているためか、むくみやすくなった。
特に下半身がむくみやすい。ふくらはぎや足首あたりが重苦しい時がある。一気にひどい貧血に
なるため、心臓が一生懸命に働かなければならずに無理がかかるせいだと思う。心不全になると
下半身にむくみがくるというが、そんな状態に近いのかも知れないなと思う。夜間になっても多尿
の状態は続いている。貧血が良くなっていけば、そんなことは段々と少なくなっていくのではない
かなと思う。尿が出るのも問題だが、尿が出ないのはもっと大変だ。腺筋症で、子宮のサイズとし
ては、医師が全摘の基準とする白人男性の握りこぶし大よりも小さなもので尿が出づらくなる症状
に苦しんだという体験談を読んだことがある。彼女は、結局全摘したのだが、尿が近いこと以上に
閉尿や排尿に苦しむ状態は怖い。

 かつて、便と一緒に筋腫が溶けてなくなってくれればどんなにいいかと思うと語った人がいた。
私も、その人と同様に尿と一緒に腺筋症の病巣が溶けて出ていってくれればどんなに助かるかと
思う。凝血とそれに伴うひどい貧血、何とかしたいと思う。

第八十六章 口の中

 口の中が粘つく。貧血がひどくなってから妙に口がねばねする。体も熱っぽい。いくら口の中を
うがいしても、お茶を飲んでも粘つく。スプレキュアを服用していた頃は、口の中が乾いてザラザラ
した感じになった。その時は、虫歯がよく出来た。婦人病のサイトを覗いてみたら、リュープリンなど
のホルモン剤の投与期間に、歯が割れてしまった。虫歯になった。歯肉が腫れた。というような症状
が書き込まれていた。歯医者に質問してみたが、これはという話しを聞くことは出来なかった。生理
期間などは吐き気が出たりするので、歯磨きが疎かになってでのことではないか、と言う。そうかなぁ。

 貧血が進むと私はやたらに氷が食べたくなる。水では駄目だ。氷の口の粘膜にくっつく、ヒヤツと
した冷感がないと駄目なのだ。貧血になると何故か知らないが口中温度が上がる。そのせいで
口の中を冷やしたくなるのだろう。この時は、氷が氷ではなく、味を持つものに感じる。貧血がよく
なると氷は単なる水の塊の味にと戻っていく。とても不思議な感覚の違いだ。貧血は、味覚障害を
起こすということかも知れない。

 若い頃は、歯のことまでに考えが及ばなかった。痛みと貧血と過多月経とその他の色々な問題に
忙殺されていて、歯や口のことなどどこやだった。だが、腺筋症生活も36年ともなると大分、周りが
見えてくるようになった。歯医者は否定するが、貧血になると虫歯や歯周病になりやすくなる。そして
歯の質が低下する。そんな気がする。そしてその原因は、口の中の唾液の状態が変化に由来する。
研究も何も科学的根拠がないけれど・・・・違うかしら。

 

第八十七章 頭重

 頭が痛い。いや痛いいうのは正確な表現ではないだろう。頭がどんよりと重い。よく医学書に
出てくるが鉄兜(被ったことはない)を被ったような重苦しさがある。目の前に突如として閃輝暗
点という輝くギザキザな紐状のものがぐるぐめ回転して視界を遮る。これは偏頭痛の予兆として
よく知られている症状だ。しかし、私の場合は、短くて10分、長くて3時間ほど続いた後は、何事
もなく消えていく。そして頭痛も起きない。大体こんなことが起きる時は貧血かひどいかひどく疲れ
ていて、肩も凝っていることが多い。頭痛は起きないが、頭が重いという状態が続く。

 痛みと同じで激痛ではなくても弱い痛みが長く続くと不快な気分になる。頭重がある時は、
自分でもしっかりしていると思っていても、頭が回転しなくなっている。ベアリングという回転
部分の潤滑油が切れてきた状態だ。空回りばかりしている。私の場合は、前頭部ではなく
後頭部や側頭部に重苦しさを感じることが殆どだ。きっとこのあたりで脳の血流が低下して
いるのだろう。

 私は、菜食主義ということもないが、肉や魚はあまり食べない。だから栄養が足りないのかも
知れない。特に豚肉など含まれているビタミンB2が足りないように思う。貧血だからと鉄剤を
摂取していても、赤血球だけが少なわけではない。白血球も血小板も血漿も減っているはずだ。
というわけで、物は試しにと総合ビタミン剤を買って飲んでみた。すると頭重が軽くなった。残念
ながら消えることはなかった。が、少し効果があったようだ。体全体も軽く動きやすくなった。
やはり偏食は良くないということか。それとも貧血が酷すぎるということか。

 この間、NHK教育テレビを見ていたら、東北大学の川島教授が認知症になる三年も前から
脳の血流が低下しているのが分かったと言っていた。また、認知症になる人は認知症と診断
される10年も前から物事に対する積極性がなくなり、手紙も書かなくなるという。脳は代償性
が高いから、少しずつ脳に変化が出てきても、かなりの間、ある一定の水準を維持することが
出来るからだろう。

 腺筋症による様様な不快な症状も徐々に体の方が健気に適応してくれていのだろう。それも
一気に来るひどい貧血に復元力が弱くなり、頭痛は回避できても頭重は出てしまうということ
なのだろう。スプレキュア服用は二度としたくない不快な体験だが、自分の体がいかに頑張って
いたかというこということが分かった。生理を止めて鉄剤を飲むとみるみる貧血が治っていった。
そして、貧血のない体はどういうものかを知った。長い間、ずっと貧血である状態に慣れていて
疲れやすいのも根気がないのも怠けたいも皆自分の性格と年を取ったせいにしていたが、違った。
単に病気だったということだと分かった。

 だからと言って、全摘すれば楽になると全摘したいと思わなかった。良性疾患の場合、絶対に
全摘した方が良いというのは、二割くらいだと言われている。そして、私は、その二割に入ること
は確実だ。こんなしんどい状態をずっと続けているのは、あまり利口とは言えない。やっぱり私は
、賢くない患者だ。単純に腺筋症を楽しむ道楽者??

 
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